2007-09-18 (Tue)
☆ おひさ
暫く寝太郎してました。生きてますよ。
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で、いきなり長文投げる。私見で推敲不足だけど、大筋は通ってるはず。
関連パブコメの締め切りが今日なんで、メモ程度ですがとりいそぎ貼っておきます。あとで整形します。
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誰か経済学の心得のある人にもっと具体的数値を放り込んで欲しいところ。俺ァ、自分の研究に心おきなく専念したいだけだ。
☆ 日本にとっての太陽光発電の必要性
地球には膨大な量の太陽光が降り注いでいて、地球上の風や水、動植物などの殆どのエネルギーの源となっています。人間が利用できる太陽光だけでも、1ペタワット(全人類のエネルギー需要量の数十倍)もの量があるとされます。これは他の再生可能エネルギーよりも遙かに大きな量です。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/e_source/esource_2.html
世界のエネルギー需要は今後も継続的な伸びが予測されています。特に電力需要の伸びは著しく、今後半世紀ほどで現在の約10倍に達するとも予測されています。その一方で化石燃料は温暖化抑制の面でも資源量の面でも利用を減らさねばならず、また風力や原子力でも供給できる量は遙かに不足すると予測されます。ウラン資源も有限で、それを解決する目処はまだ立ちません。その一方で温暖化対策は待ったなしの状況で、今後数十年のうちに、温暖化ガスの排出量を何割も減らす必要があります。
このため半世紀後には、世界の電力の半分以上を、太陽エネルギー(太陽光または太陽熱)で供給しなければならないと言われています(A.Feltrin他、WCPEC-4, A9-3-07や、ドイツ環境省による予測など)。
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太陽光エネルギーの利用法は大きく太陽熱と太陽光に分けられます。砂漠などの直射日光の多い地域では太陽熱発電が向いています。効率良く集光して、高熱を作り出せるからです。一方、日本のように散乱光が多い気候には、太陽光発電が適しています。太陽電池は直射光だけでなく、散乱光も有効利用するからです(日本太陽エネルギー学会「太陽エネルギー利用技術」P.43など)。
その太陽光発電が日本にとって持つ意味を、下記に簡単にまとめました。
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・化石燃料による火力発電の代替手段としての有用性
ご存じの通り、発電由来の温暖化ガスの排出量の殆どを、石炭・原油・天然ガスなどによる火力発電が占めています。二酸化炭素の貯留も根本的な解決ではなく、また燃料資源そのものが有限ですので、時間稼ぎに過ぎません。従って、化石燃料を用いた火力発電を、他の低排出な電源で極力置換しなければいけません。
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火力発電は現在の電力供給体制において、昼間と夜間の電力需要の差を吸収する大きな役目を果たしています。このため、需要に合わせて出力を自在に変えられる供給体制を、他の種類の電源を用いて構築し直さねばなりません。(柔軟性に富む電源である)水力発電を増やしたり、バイオマス燃料を用いた火力発電に置換することは非常に有効です。しかしこれらも無理なく供給できる量に限りがあり、現在の化石燃料による火力発電を大幅に減らすにはまだ足りません。
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現在利用できる手段として、この他に原子力、風力、太陽光などが上げられます。
これらはそれぞれ、下記のような相補的な特徴を有します。
原子力:
長所:1カ所で大量の発電ができ、それなりに恣意的に出力を制御できる
現時点でそこそこのコストで利用できる
短所:出力をこまめに変化させるのは苦手で、需要の変動に追いつけない(夜間電力が余りやすく、どこかで処理が必要)
有事に弱い(一度災害やトラブルが起こると、影響が長期間で広範囲に及ぶ)
燃料価格が変動し、ウランの量にも限りがある(高速増殖炉も、実用化の目処が立っていない)
建設や廃棄に時間がかかる
核燃料特有のリスクがある(廃棄物の処理、汚染事故、兵器転用のおそれなど)
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風力、太陽光など:
長所:1つ1つは小規模なので、発電している範囲では簡単に出力の調整が可能(たとえ余っても処理の必要なし)
分散して大量に配置するので、災害やテロ攻撃等に強い(*)
太陽光や風力の場合、燃料価格が変動するリスクが無い
燃料資源が将来も枯渇する心配が無く、かつ既に実用化されている
短所:天候などに出力が左右される。(ただし、実用にならないほどではありません。念のため)
現時点では普及量が少なく、比較的高コスト
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(*)…数千〜数十万基で大規模発電所1基分の出力に相当します。1つ1つは壊せても、広範囲に散らばった様々な設備を、同時かつ完全に停止させるのはほぼ不可能です(そこまで考えるならば、集中型の電力網の送電停止リスクの方が大きい)。また、修理やメンテナンスも比較的簡単です。
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このうち、日本では原子力が電力の3割を供給しています。これはベースロード電源としての利用ですが、問題は(現在化石燃料が主体となっている)ピークロード電源の代替です。たとえ原子力で負荷追従運転を導入してピークロードに用いたとしても、稼働率が低下し、また夜間の余剰電力の処理を必要とするために、ピーク部分のコストは現在の数倍になります。しかも原子力だけに頼った場合、燃料調達のトラブル(価格の大幅変動や供給プロセスの事故など)や地震などの災害に対して、日本は大きなリスクを抱えることになります。このリスクは過去のトラブルで繰り返し示された通りです。
またウラン235の資源は有限であることから、我々の世代は良くても、1〜2世代先にとっては燃料資源自体が確保できない危険性があります。開発が進められている高速増殖炉も、安全・低価格・確実に運用できる目処は立っていません。現時点で定量的な評価は難しいだろうとも思いますが、現時点で国の将来を任せきってしまうのは危険性が高すぎると考えます(可能性が無いとは言いませんが)。さらに世界的に見ますと、原子炉を安全・確実・平和に運用でき、その大出力を分配する送電網を整備できる国は限られます。地理的・政治的・経済的事情によって利用できる量には限りがあります。無理に利用を拡大すれば、事故や悪用の危険性も増大します。
結局、原子力は現時点での温暖化リスクの低減には一定の効果を持つと考えますが、これに頼り切ってしまっては、将来のリスク(コスト)が高くなりすぎます。このリスクを緩和する手段が、今の日本には必要です。
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ここで、再生可能エネルギーを導入することで、こうしたリスクを緩和することができます。再生可能エネルギーは太陽光に由来するエネルギーを利用しますので、少なくとも今後数十億年は利用可能と考えられます(その前に人類が滅ぶ心配をした方が良い)。エネルギーの自給率を高め、国のエネルギーセキュリティを向上させます。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_2.html
事故や災害が起こっても、その影響は最小限に抑えられます。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_4.html
特に太陽光発電は、昼間の需要が多い時間帯だけに発電しますので、その分確実に化石燃料の使用量を減らせます。天候には左右されますが、現在の電力需要のピークは冷房需要によるものですので、その対策としては最適です。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_3.html
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現状の再生可能エネルギーは確かに高コストではありますが、それでも実用にならないほどではありません。最も高コストな太陽光発電でも、昼間の電力の価格からすれば、現状でもなんとか元が取れる水準になってきています。さらにその価格も、原油高やシリコンの供給不足の影響も少なく、着実に下がり続けています。適切な施策さえあれば、今後10数年のうちに、低排出なピークロード電源としては最も低コストな部類になると考えられます(後述)。天候には左右されますが、それでも利用した分だけ発電コストを安くでき、温暖化ガスの排出量も減らせるようになるでしょう。
つまり発電による排出量を減らすとき、太陽光発電を他の電源と適宜組み合わせることで、全体的なコストを最も安くできるはずです。エネルギーの自給率を高め、選択肢を増やし、エネルギー供給の安全性・安定性も高めます。
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・温暖化対策としての有効性
温暖化ガスの排出量削減の必要性はご存知の通りです。
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html
限界と言われている2〜3℃の気温上昇に抑えるには、2050年までに排出量を現在の半分以下に減らし、今世紀中には現在の2、3割以下にする必要があるとされています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/energy/siryou/dai30/30siryou4.pdf
また現在の世界の温暖化ガスの排出量のうち、排出量の約4割が発電由来です。排出量の削減は、電力の低排出化なくしてはあり得ません。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2005/html/17011120.html
しかも今後の排出量の増加は、主に途上国で起こると予想されています。
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太陽光発電は、開発当初は非常に高コストで、製造エネルギーも多く必要としました。しかし長年の努力を経て、一般にも市販されるようになった現在では、製造時のエネルギーの数十倍のエネルギーを、しかも純粋な電力として発生する、優秀な電源になっています。また排出量も非常に少なく、他のどの電源にも劣らない水準になっています。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_1.html
これは原料の採掘や精製の段階を含め、ライフサイクル中に投入するエネルギーを全て考慮に入れた値です(もちろん他の発電方式でも、設備の製造・運用・廃棄などにエネルギーを投入する必要があります)。”太陽電池を作るにも電力が必要だから役に立たない”などという表現はデマです。
製造時のエネルギーや排出量を取り戻すまでのペイバックタイムは2年程度で、1年以下のものも実用化されはじめています。温暖化ガス排出量の削減手段として十分な性能です。
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なお、未だに20年近くも昔の、しかも一般的でない条件での計算結果を引用する例が見られますが、これは学術的にも倫理的にも筋が通りません。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/supplement/supplement_1.html
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・太陽光発電のコストの見通し
太陽光発電の現時点でのコストは、電力量あたりでみますと、寿命20年ならば45円/kWh、寿命30年ならば30円/kWh程度です。
このコストは政策的な後押しによって、この10年で半減しました。
http://www.solar.nef.or.jp/josei/kakakusuii.htm
また今後のコストは、現在の技術の延長でもさらに半額程度になると言われています。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/manufacturer/78384/
http://www.nedo.go.jp/informations/other/161005_1/161005_1.html
実際の市場価格も、各国の導入ペースに影響されつつも、原油のような乱高下は示さず、長期的にはゆるやかな低減トレンドを持続しています。
http://www.iea-pvps.org/isr/06.htm
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さらに、現在主流の結晶シリコンはより高性能・省資源に改良されつづけ、さらに薄膜太陽電池などの新技術が次々と実用化されています。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/principle/principle_4.html
こうした性能向上と普及の拡大に従って価格はさらに下落を続け、適切な施策さえあれば、今後10〜20年のうちに他の電源に対して補助無しで競争力を有する水準まで低下すると予測されています。
http://www.heliotronics.com/papers/PV_Breakeven.pdf
技術目標としては、さらに低価格な目標が設定されており、将来的にはベースロード電源並の価格水準も可能と考えられています。
http://www.nedo.go.jp/informations/other/161005_1/161005_1.html
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一部で言われているような、”今後もコストが下がらない”などと言う条件設定は全く不適切で、筋が通っていません。
現在までの価格低下の実績、新技術の開発・実用化の進展状況、そして今後の予測、どれをとっても、今後も価格が着実に下がって行くと考えるのが、最も自然と言えます。
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ただし、そのペースは国内での生産規模に大きく左右されます。相応の実効ある施策を実施してはじめて、2010年までに約5GW、2030年までに100GWの目標が達成でき、太陽光発電が国全体にもたらす、貴重で多様な利益を得ることができます。逆に普及が遅れれば輸出競争力が落ち、国全体にとって大きな損失となるでしょう(後述)。
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・価格変動のリスクからみた優位性
原油やウランの価格は大きく変動します。例えば2002年からの3年ほどで約2.5倍になっています。この場合、火力発電(コストの約半分が燃料)ならコストが1.75倍、原子力発電(コストの約1/4が燃料)でもコストが1.38倍の計算になります。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2005/html/170g0010.html
しかも過去の実績から、このような燃料の価格変動は予測が難しく、国のエネルギー供給リスクを増大させます(エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル」P.206などを参照)。
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これに対して太陽光発電のコストは、近年の急激な需給逼迫や原油高に際しても年数%程度の緩やかな変動しか示していません。
このような価格変動のリスクの少なさは、結局は必要なコストを低減する効果を持ちます。債権で言えば、優良債とジャンクボンドの差に相当します(エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル」P.208などを参照)。心理的にも、供給側と需要側の双方に、電力コストに対する安心感をもたらすでしょう。
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・太陽光発電の付加価値
太陽光発電は、下記のような特長も有しています。ひとつひとつは小さくても、合わせると大きな効果を生みます。またこの多くは、大規模な集中型電源と相補的です。
・電力を使う建造物にじかに取り付けられるので、
・送電線の容量に余裕ができます。夏の冷房需要には特に効果的です。
・送電網の変圧器や電線の温度上昇を抑えて送電損失を減らすので、実質的に発電量が増えたのと同じ効果があります。機器の寿命も延びます。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_3.html
・パネルの下の建物(や車など)の温度を下げ、寿命を延ばす効果があります。
・利用者の節電意識を高めます。
・災害や停電時の非常用電源になります。
・国際貢献の対象物に適します(政情・経済事情・送電網事情・水事情などの悪い途上国や砂漠地域などでは、安全かつ最も低コストな電源となる)
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・日本国内で利用できる量
建物や高速道路の防音壁、空き地などで、日本が必要とする分には十分な面積があります。物理的に設置可能な場所で約800GWp、無理なく設置できる場所だけでも約200GWpを設置できる場所があるとされています。
http://www.nedo.go.jp/nedata/17fy/01/b/0001b008.html
200GWpの設備が1年間に発生する電力は約200TWhで、日本の年間電力総需要の約2割になります。この場合、晴天時の昼間のピーク時には、日本の最大需要の6割以上の電力を発生します(*)ので、それ以上設置しても余ります(蓄電すれば別ですが)。つまり、一部で使われるような”エネルギー密度が低い””設置面積が大きい”などという「批判」は、国土の狭い日本にあっても、事実上意味がありません。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_3.html
(またこれは同時に、太陽光発電が万能ではないことも示しています。現在の技術では200GWp以上設置してしまうと蓄電が必要になり、その分コストが割高になってしまいます。200GWpを超える利用については、将来の蓄電・送電技術の改良に期待せねばなりません。)
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(*)…全国すべてのパネルが真南を向いていると仮定すればもっと大きくなりますが、実際は設置方向が分散していますので、真夏の正午で全国が快晴の時、総設備容量の6〜7割程度の瞬時出力になると考えられます。
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・出力の変動について
太陽光発電は天候に応じて出力が変わってしまいますが、広い範囲に非常に多数の設備が散らばって配置されるので、全体では滑らかでゆっくりした変動になります。たとえば家庭用の設備ならば、数十万軒分が大型発電所1基に相当します。それが広範囲に散らばっていますので、たとえ足早な台風がやってきても、全体の出力の変化速度は滑らかでゆっくりになります。このため、既存の発電設備の出力を調整することで対応が可能です。雨になった時はそのぶん水力発電や火力発電に頼ることになりますが、それでも晴天時の時の分は排出量を削減できるわけです。さらに、その火力発電の燃料も、将来はバイオマス燃料などに置き換えられることになるでしょう。
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また、太陽光発電の出力変動は確率的に取り扱えます。一般論としては、十分広範囲に散らばった太陽光発電設備は、特別な工夫なしで電力網の負荷の3割以上を接続できるとされています。小規模な蓄電設備を付加したり他の電源と連携させれば、もっと増やすことも可能です。導入の上限量が10%以下などという主張が過去に為されたこともありますが、これらは実証実験で否定されています(エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル」P.261などを参照)。
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なお、需要とのギャップを他の電源で埋める必要性がある点では、原子力発電も多かれ少なかれ同様です。これをとらえてパラサイト呼ばわりする意見もありますが、それは殆どの電源について言えることです。万能の電源は無いのです。
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・太陽光発電の系統への影響について
上記のように、導入量が少ないうちは特別な対策は基本的に必要ありません。しかし将来普及が進み、太陽光発電を狭い地域に集中的に導入した場合(たとえば半分の家に導入された場合など)については、導入側および電力網の双方に技術的改良の余地があります。導入側では、たとえば地域単位で小規模な蓄電設備を設けて、変動を均す技術開発が有効と考えられます。また、電力網側では上流から流すことしか考えられていない場合が多かったのですが、今後は下流からの逆潮流も受け入れるよう、設備の更新の機会などを捉えて、順次改良していく必要があるでしょう。
これらはいずれも既存技術の延長で対処できる問題です。重要なのは、導入しようという意志だと言えます。
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なお、カリフォルニアの大停電を引き合いに出して再生可能エネルギーの信頼性を論じようとする記述が世の中に見受けられますが、これはデマです。この大停電は市場の制御に失敗して売り惜しみを招いた人的ミスで、再生可能エネルギーの技術的要因に起因するものではありません(エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル」P.96など)。
太陽光発電は出力が天候によって変動しますが、元々信頼性の高い設備を分散して配置するため、結局は、電力網全体の安定性をむしろ高められます(同、P.253など)。
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・輸出産業としての将来性
現在の世界の太陽光発電設備の生産量は年2GWpほどですが、これは2030年には80GWp、1700億ユーロ(26兆円)ほどに伸びるとも予測されています。
http://www.epia.org/fileadmin/EPIA_docs/publications/epia/EPIA_SG_IV_final.pdf
世界シェアの1割でも、数兆円規模です。適切な普及政策を採れば、その費用に見合った輸出利益が見込めます。逆に普及政策が不十分で国際競争力を失えば、市場を失うことによる逸失利益だけでなく、自国の必要分を輸入することによって電力コストの無用な上昇を招くでしょう。
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・国内他産業に与える影響
_・原料シリコンのシェア
半導体産業に欠かせない多結晶シリコンの生産量で、日本は2005年時点で21%のシェアを有していました。しかし海外で太陽電池の生産量が拡大し、日本だけが取り残されているため、現状のままでは2009年にこのシェアが12%と、ほぼ半減する見通しになっています(資源総合システム「太陽光発電マーケット2007 2006年レビュー」P.138)。半導体業界全体への影響を懸念します。
_・他産業への波及効果
太陽光発電は、下記のような技術を利用します。
・結晶シリコン製造、透明導電膜、ガラス加工、アモルファス半導体、化合物半導体、ナノスケールの微細加工技術、反射防止膜などの光学薄膜、耐候性樹脂、電力制御技術、蓄電技術など
これらを通じて、下記のように様々な産業とのシナジー効果を生み出します。
・半導体製造全般(特に、日本が得意とするレーザーやCCDなど、発光・受光素子と共通する技術が多い)
・液晶やプラズマなどの平面ディスプレイ
・インバーター回路など電力制御技術全般
・蓄電池技術
・応用製品全般(建築物全般、宇宙、車、移動体など)
このようなシナジー効果を定量的に測るのは難しい面もありますが、数兆円規模の産業の影響力は無視できない規模でしょう。
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・今後の普及に際しての普及政策の必要性
_・投資リスクからみた必要性
太陽光発電パネルの寿命は現在20〜30年程度とされ、民生品としては極めて長寿命な部類です。寿命は製品のパッケージングのみで殆ど決まりますので、メーカーの経験次第で今後も伸びると思われます。それだけの長期間に亘る投資商品であるにも関わらず、現在の日本の制度では電力会社のボランティアが中心のため、メーカーと消費者双方の投資リスクが高くなっています。
・消費者にとっては、発電した電力の買い取り価格に、政策的保証がなく、購入に二の足を踏ませています。これは平成17年度で国からの補助が打ち切られた途端に、補助額自体は少額(設備価格の1〜2%程度)であったにもかかわらず、市場が急減速したことで実証されています。
・また、今後も価格低下が予測されているため、買い控えを招いていると考えられます。排出量を速やかに減らすためには、早期に導入するほど有利になるような施策が必要です。
・上記のように市場規模が政策に左右されますと、メーカーも国内への大規模投資にリスクを抱えてしまいます。結果として、より投資リスクの少ない他国に製造拠点を作る動きが活発な一方、国内では最大手のシャープが次世代工場の規模を決めかねるなど、国内産業の空洞化に繋がる動きが進んでいます。
逆に言えば、長期投資商品としての安全性を確保すれば、普及がそれに応じて進み、企業の国内投資環境が整うはずです。その安全性は、国の政策に左右されます。
_・輸出競争力確保からみた必要性
太陽電池の製造コストは、量産規模に左右されます。同様の技術ならば、規模100倍でコスト半減とも言われます。
このため国内市場が無ければ、競争力もその分失われます。それは風力発電機でも既に実証されています。
http://www.nedo.go.jp/enetai/other/fuuryoku/kaigaikokusan_graph.pdf
風力は、かつては三菱が世界トップシェアを持っていました。しかし国内市場が伸びない間に、(強力な政策的バックアップで開発と普及を進めた)デンマークの企業に国外も国内も席捲されました。国内での増加と歩調を合わせて息を吹き返してきましたが、シェアはまだ2%です。
http://www.mhi.co.jp/env/csr/csr03.html
http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/special/070518_taiyo02/index3.html
世界の太陽光発電市場の状況を見るに、ドイツばかりでなくEU全体、アメリカ各州やアジア各国が普及政策を次々と導入し、相対的に日本の市場シェアが下がっています(PV News Vol.26,No.3など)。海外に対する日本の生産量のアドバンテージは、1年分残っているかどうかも怪しい状況です。
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_5.html
太陽光発電パネルの輸出入にはコストが必要です。今後製造コストが低下するにつれて、輸出入に絡むコストの比率がさらに増大し、消費地での現地生産とのコスト競争力の差は拡大するでしょう。競争力を維持するには、市場での価格低減ペースに見合った速度で国内市場を拡大させ、製造コストの低減を促す必要があります。
現状のままでは、海外の消費地近辺で生産する動きが今後さらに加速すると考えられます。国内の生産規模の伸びが海外に比して鈍化し、競争力がその分失われます。
_・普及速度からみた必要性
太陽光発電の価格は今後さらに下がる見通しです。しかし純粋に市場の発展に任せていたのでは、既存の電源との価格競争のため、普及速度は遅くなります。また消費者の立場から見ても、今後価格低下が予想されているため、早期の導入が有利になる施策が無くなったため、価格が下がるまで待つ心理が働いていると考えられます。
しかし現状の普及ペースでは、輸出産業としての競争力が低下してしまい、将来いざ導入しようとしても殆どを輸入品やライセンス品に頼ることになり、価格が割高になると考えられます(このような状況が起こり得ることは、既に風力発電機で実証されています)。
すなわち、国内での普及ペースが遅すぎれば、排出量削減が遅れるのみならず、電力コストの上昇、エネルギーセキュリティの悪化を招くと考えられます。輸出産業としての競争力、および今後のエネルギーセキュリティの確保のため、確固とした普及政策は必須です。何もせずに座していれば、長年の努力で積み上げてきた競争力や産業基盤を、みすみす他国に奪われることになります。
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・世界の太陽光発電の利用可能量について
太陽光のエネルギー量については記述のように十分な量が利用可能です。また、生産に必要な原料に関しても、今後人類が必要な分を生産できる量は十分にあり、事実上無限と考えられます(A.Feltrin他、WCPEC-4, A9-3-07や、ドイツ環境省による予測など)。よって、資源量での心配はありません。
なお、昨今騒がれている精製シリコンの原料の不足は一時的な現象で、それも数年のうちに現在の2.5倍が供給され、市況が緩和する見込みです(資源総合システム「太陽光発電マーケット2007 2006年レビュー」P.138)。これをネタにして将来の不安を煽るような記述は、デマです。
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・適切な普及促進政策の必要性
現在、世界では様々な導入促進政策が用いられています。日本で現在用いられているRPS法は、一定量の導入を電力会社に義務づける方式(quota制)ですが、既に記した通り、この方式には下記のような欠点があることが、日本を含む各国での実績から明らかになっています。
・将来の採算の見通しがはっきりしない。このため設置した人や生産企業の投資リスクが高くなり、普及がなかなか進まない。
・普及が進まないので、コストもなかなか下がらない。
・(近視眼的な)制限によって、新規の参入機会が限られる。
https://www.dspace.cam.ac.uk/handle/1810/131635
これに対して、ドイツに代表されるFIT制の普及効果は明らかです。
・導入時点でその後の売電価格が決まるため、導入者の投資リスクが低くなる
・市場の見通しが保証されるため、企業の国内投資リスクも低くなる
・早期に導入するほど有利なため、普及が急速に進む
・初期にはコストが高くつくが、その後のコスト低減効果では勝る
・総コストは買い取り価格によって調整できる
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kikaku/renewables/pdf/070424_1.pdf
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太陽光発電は既に「実用になるかならないか」の段階は過ぎ、「いかに速く安く導入し、温暖化ガスの排出量を減らすか」「いかに国の競争力を強くするか」という段階に移行しています。EUや米国の政策も、そのような状況を念頭に置いて策定されつつあります。
http://www.euractiv.com/en/energy/eu-renewable-energy-policy/article-117536
http://www1.eere.energy.gov/solar/solar_america/about.html
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特に重要なのは、導入した企業や個人の投資環境を整えることです。これには、
・発電した電力の買い取りの保証
・買い取り価格の法的な保証と、年ごとの逓減(早く買う人ほど得に)
・導入機会の無用な制限の撤廃、各種手続きの簡略化
・費用の用途の透明化(目的外使用の禁止、第三者によるチェックなど)
などの施策が必要です。太陽光発電は事業に対する投資ですので、相応の税の減免措置なども必要です。
要は、他の投資商品と比べられる程度の投資環境がなければなりません。これに政治が果たす役割はとても大きいことが、上記の文献でも報告されています。法的な優遇措置は必須です。
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普及施策にかける額は、将来の導入目標量から決定できます。2030年に100GWpの導入目標が立てられておりますが、これを実現するためには相応の国内産業規模が無ければなりません。生産量の半分を輸出するならば、2030年までに合計200GWpを生産できるだけの国内産業を育成する必要があります。2010年から生産してもこれは平均で10GWp/年の生産量であり、現在の国内生産量の10倍以上です(2006年時点で930MWp; PV News 26(3),Mar 2007, P.6)。最終的には現在の20倍以上に育てなければ、間に合わないでしょう。
しかし仮に年20GWpの生産能力を備え、うち10GWpを輸出できたならば、価格が現在の1/3に下がったとしても1兆円以上の輸出額となり、日本に年1千億円以上の利益をもたらすでしょう。この10GWpという値は2030年に予測される市場規模(80GWp;EPIA "Solar Generation IV-2007" P.34)の12.5%に相当します。現在のシェア(2006年で37%、PV News)から考えて、今からでも確保は十分に可能と考えられます。
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・政治面での利益
日本には
・これまでの開発・普及の努力の積み重ね
・変化に富んだ地理条件
・関連性の深く発達した産業
・乏しいエネルギー資源
など、太陽光発電でリーダーシップを発揮する条件が揃っています。適切なペースで普及を進めることで、
・温暖化ガスの排出量を速やかに削減する
・技術開発と価格低減の加速に貢献する
・途上国への支援策に組み込むことで、排出量の増加を抑えるだけでなく、生活の質の向上に貢献する(飲料水の確保、医療、通信、教育、あらゆる面で支えとなる)
などの国際貢献を行えます。
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逆に、このような恵まれた状況にありながら普及の努力を欠けば、怠慢のそしりは免れません。実際、太陽光発電の専門学会では、日本の現状は悪例として引き合いに出されるようになっています(22nd EU-PVSEC、Opening Sessionなど)。また海外の一般の人々からは、「日本は太陽電池を売りつけることしか頭にない」という捉え方をされる危険性があります。海外の太陽電池企業の人ですら、本気で日本の政策の不備に怒っている人がいます(Schott Solarの社長さんなど、学会で日本の担当者を公然と叱っています)(もっとも国内市場が十分で無ければ、輸出競争力で負けるでしょうが)。
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・太陽光発電の適正な利用規模について
上記のように導入のメリットが多い太陽光発電ですが、万能でもありません。
・ピークロードとしては良くても、ベースロード電源としては高すぎます(将来はわかりませんが)
・当然ですが、夜間は発電できません(うんと将来は宇宙から24時間送電できるかもしれませんが)
他の電源と組み合わせてこそ、真価を発揮します。これは他の電源についても言えることです。
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現在の技術水準では、日本では100〜200GWp程度の設備を導入を目指すのが妥当と考えます。
この設備量ならば、総電力需要量の1〜2割、昼間のピーク需要の3〜6割程度を供給でき、かつ無理なく導入可能と考えられます。
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・まとめ
以上より、適切な施策を採ることで
・まとまった量の温暖化ガスの排出量を早期に削減できる
・将来の電力コストを削減できる
・他の電源との相補的な効果を生み出し、国のエネルギーセキュリティを向上させる
・輸出競争力を確保することで、継続的な輸出利益を確保できる
・他産業への波及効果が期待できる
ということが言えます。経済的にも政治的にも、国全体に相応のメリットをもたらすでしょう。
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逆に、適切な施策が無ければ、
・温暖化ガス排出量の削減がその分遅れる
・将来の電力コストが無用に高くなる
・国のエネルギーセキュリティが低下する
・シェア喪失による逸失利益が発生する
・他産業への波及効果がその分失われる
などのリスク(コスト)が増大するでしょう。
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既に国内でも最大1GWの新規工場建設が表明されるなど、生産側の準備は整っています。あと必要なのは、政策的な環境整備だけです。前者を選ばない理由はありません。
また施策の形態として、実績でfeed-in tariffに勝る方式は知られていません。排出量削減が急がれる現在、日本にFITを適用しない合理的な理由は無いと考えます。経済的にも、技術的にも。
☆ デマのパターン
再生可能エネルギーに対するデマには、よく下記のような特徴が見られる。
(A)一部の否定的な面だけを強調して、全体を否定しようとする
(B)事実に反する事柄を混ぜる
(C)前後におかしな文を繋げて、否定的な内容にみせかける
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参考までに、太陽光発電に関して実際に見かけた例を幾つか挙げておこう。
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・「太陽電池の製造にも、電力が必要です」(だから電力源として使えない、など)…(A)(C)に該当
ごく当たり前の事実を、さも致命的な問題のように見せかけている例だ。
発電設備の製造や建設に、電力などのエネルギーを投入する必要があるのは当然だ。
火力発電だろうが原発だろうが水力発電だろうが、それは変わらない。
投入するエネルギーを全部計算に入れても、今の太陽電池はその十倍以上のエネルギーを(しかも純粋な電力として)発生できるのだから、このような表現を否定的に用いるのはデマに他ならない。
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・「太陽光発電の導入には、○兆円もかかるじゃないか」(だから高すぎる、など)…(A)(C)に該当
この手の比較では大抵、比較相手(原発や火力発電所)の燃料費や運転費用、ピークロードとベースロードの差などが計算から除外されている。太陽光発電のコストと比較したければ、20年なり30年なりの燃料代や運転費用、使われ方によるコストの違いも含めて比較しなければならない。当然のことだが、太陽は昼間の最も高料金の時間帯だけ照り、請求書も送って来ない。
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・「太陽光発電の導入には、コストがかかる」(だから温暖化対策に使えない、など)…(A)(C)に該当
トータルでの利益を無視して、比較的小さな問題だけを強調している例だ。
温暖化対策は、どうやってもお金がかかる。今そのお金をかけなければ、近い将来にもっと大きな被害が出る、という予測も既に出ている(スターン報告とか)。
太陽光発電は、適切な量を使えば、温暖化対策の費用を最小に抑えることができる。それも昼のピーク需要に自然に対応できる、貴重な発電手段だ。
これに限らず再生可能エネルギーは、導入コストだけでなく、それによって得られる利益、そして他の電源とのトータルでの比較などの定量的な議論を経ていなければ、その有用性を論じることは出来ない。その過程も経ずに有用性を否定するのは、デマだ。
ついでに言っておくと、温暖化対策に費用がかかるといっても、GDPなどへの影響は軽微に留めることが可能と予測されている。要は産業の変革なのであって、これに早く適応した方が経済的にも得だったりする。
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・「feed-in tariff(FIT)制には、コストがかかりすぎる」(だから他の方式の方がいい、など)…(A)(B)に該当
トータルでは最も有効なのに、その事実に反する印象を植え付けようとする例だ。
同様の議論が昔なされて、イギリス(日本が手本にした国だ)など幾つもの国がFIT以外の方式を幾つも試した。結果、コストの面でも普及量の面でも、悉く失敗している。
ドイツでの損得を分析した結果、FITは現在最も有効な普及促進手段とされている。実際、今は多くの国がFITに切り替えている。それこそ、すぐ隣の韓国さえ。
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・「太陽光発電システムは電磁波を出してるんじゃないか」(だから危険じゃないか、など)…(A)(B)に該当
実際には問題にならない事柄の誇張だ。
太陽光発電システムは、わざと電磁波をまき散らすようなものでは無い。インバータ回路などから微弱な電磁波は出るが、十分弱い水準まで遮蔽される構造になっている。普通の家電製品と同様の基準が適用され、一般的な利用状況では問題無いように造られている。
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・「太陽光発電は、エネルギー密度が低い」(だから効率が悪い、設置面積が足りない、など)…(A)(B)(C)に該当
実用上差し支えの無いことを、さも致命的な問題のように見せかけている例だ。
日本のように狭い国でも、屋根や防音壁、遊休地などで十分な設置面積がある。
無理に1カ所に設置して、大型の発電所のようにリスクを1カ所に集中させては、むしろ分散型のメリットが失われる。
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・「日本では太陽光発電(や風力発電)が増えているはずなのに、火力発電が増えているじゃないか。」(だから実は貢献してないんじゃないのか、など)…(A)(B)(C)に該当
「現時点で効果が見えないから」と言って、医者の良薬をやめさせようとする霊感商法と同じである。
太陽光発電の日本での導入量は平成17年度時点で80万kW程度で、まだ大型の発電所1基分にも満たないのだ。
http://www.nedo.go.jp/nedata/17fy/01/b/0001b003.html
これらの年間総発電量は80万kW×1000kWh/kW/年=800GWh/年=8E11Wh/年ほどで、まだ日本の全需要量(年間約1E15Wh)の0.1%以下だ。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1006.html
つまり、太陽光発電が増えた分よりも、トラブルで停止した原発を代替するため火力発電に頼った分の方があまりに多かった、ということだ。太陽光発電の必要性を強調こそすれ、その効果を否定するものでは断じてない。
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・「太陽光発電の電力は、逆潮流で送電網に送るのは無理だ」(だから設置するだけ無駄だ、など)…(B)に該当
ズバリ、嘘である。逆潮流の技術は、私達が日頃お世話になっている、電車の回生ブレーキなどと同様の技術だ。現在の日本の技術ならば、難しいものではない。
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・「太陽光発電を使うなら、(出力が変動するから)蓄電装置も要るじゃないか」(だから高くなりすぎる、など)…(A)(B)に該当
先入観に付け込んで、事実と反する主張をしている例だ。
既に述べた通り、基本的に蓄電装置は不要だ。将来、年間電力需要の1割とか2割以上を賄うようになればある程度は必要になるだろうけれど、それでも限定的で済むはず(蓄電池を付けると恐ろしく高性能な電源になるので)。
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・「儲けを考えるなら、輸出だけすればいいじゃないか」
・「海外で安くなってから、輸入すればいいじゃないか」(だから価格的優遇はいらない、など)…(B)に該当
世の中そんなに甘くない。
・太陽電池の生産コストは、当然のことだが、生産規模が大きいほど下がる。
・価格的優遇なしで市場に完全に任せていると、普及が遅くなり、国内市場が海外に比して小さくなる。
・相応の国内市場が無ければ、壊れ物の太陽電池の輸送費を嫌って海外で開発・生産することになる。国内で相応の規模の市場が無い限り、国内生産して輸出するのは競争上不利になる。
・競争力低下によって輸出利益が失われる。
・いざ購入する段になると、海外製品を輸入することによってコストが余計にかかる。もしくは導入できる量が減る。
・その分太陽光発電で削減できたはずのコストがかさみ、何らかの形で、排出量削減コストや電力コストが却って高くなる。
年間生産額で兆円単位、年間利益だけで千億円単位の話だ。ばっさり切り捨てて良い額ではない。
また同じお金をかけるならば、現在のRPS制よりもグリーン電力証書よりも民間基金よりも、FITが最も有効なことは実証されている。
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価格優遇の費用がどこから出るにせよ、それは温暖化対策費用の一部であり、他の手段を用いても、何らかの形で必要になる費用だ。太陽光発電にかける額には検討の余地があるが、少なくとも「全く補助しない」「無制限に補助する」などの極端な条件が損な事は明らかだ。しかし適度に金をかければ、温暖化対策の出費がトータルで一番低くなるところがあるはずだ。
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ついでに書いておくと、輸出を適宜確保すると同時に国内の導入も進めると、市場価格の下がるペースが予想と違ってきたとき、輸出利益と国内の導入費用が相互に保険になり、国全体でのリスクが下がる。
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・「安くなってから買う方が、国のために良いのではないのか」…(B)に該当するが、素朴な疑問とも言える。
これは逆に考えてみると判りやすい。安くなるには、広く普及して、今よりももっとたくさん生産されなければならない。でも、仮にみんなが安くなるまで買わずに待っていたら、いつまで経っても安くならない。
しかし今、コストを下げる技術は既に我々の手の中にある。それも、層の厚い多様な技術が揃っていて、普及さえすればコストダウンが確実な状態と言える。だから最初に頑張ってたくさん導入すれば、値段が早く下がり、そのぶん普及も速く進む。将来の世代への贈り物として、胸を張って導入すれば良い。
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他に新しいパターンを確認したら、随時追記するかも。
2007-09-24 (Mon)
☆ 帰宅
片付けて土産仕入れて、昭和ICで解散。かけーんはここから8時間ドライブだって?
かいン氏を高崎で投棄して、下道にチャレンジ。R354は生活道路っぽいな。渋滞はしなかったけど、信号が多くて遅い。もっと北寄りに走った方が良いか。
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速攻で沈没してぐぅすかぴぃ。
今回、「なんにもしない」を満喫してしまった。良きかな。
2007-09-26 (Wed)
☆ ピンバッジ
お隣の研究所の人から頂きました。わーい♪
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というかはやぶさ2はまだ瀬戸際なのか。ここで放り出してあとは他国に任せた、というパターンはいい加減にやめようや。
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別に宇宙開発に限ったことじゃない。国力相応の責任ってもんがあるし、サボれば何らかの形でしっぺ返しがある。
日本は世界と常に網目のように複雑に繋がっていて、その動きには必ず相応の反応が返ってくる。日本人はそういう感覚が鈍い。その鈍さはむしろ、ある種の美徳にも通じるものとされてきた。
しかしこの情報化時代、いつまでも殻に閉じ籠もってもいられない。難儀と言えば難儀な時代であるが、文句ばかり言うより、チャンスとみて活かすべきだろう。
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世界と自発的に繋がり、競い、協力し、意見をぶつけ合うのは、決して悪いことではない。頭では分かっているはずだ。今の日本に必要なのは、もっと経験を積むこと、挑戦することだ。
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↑わからない人は記憶の片隅に留めておいてくれれば、それでいい。でも「わかっているのに目先の利益だけ考えて人の足を引っ張る人」は、自分の首を絞めておられないかどうか、ちょっと考えてみて欲しい。
☆ 意見送付
と言うわけで例によって青臭い内容だが、松浦氏の案内に従って、文科省、総合科学技術会議(福田総理)、JAXA経営企画部に意見をお送りした。要点は下記の通り。実際の文章はですます調、内容も送り先によって適宜調整。
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・完遂の重要性:
手を付けた技術開発を、技術的に正当な理由なしに、途中で放り出すのは日本の政策の悪癖。これは新しい技術や産業の芽をつぶし、人材を無駄遣いする。他国にも「車輪の再発明」を強いる形となり、技術革新を遅らせる。
小さな事でも、日本が技術や成果を確固としたものまで育ててこそ、日本の地位が確固としたものとなる。また、他国がそれを足場として、さらなる高みに登る助けとなる。いつまでも同盟国におぶさったイエスマンでは、ここぞというときに役に立たない。
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・日本の独自性と優位性の確保:
国際競争の激しい昨今、独自性と優位性を確保し、なおかつ国内外に多大な宣伝効果をもたらしている「はやぶさ」計画を推進することは、日本の宇宙開発に充分大きな利益をもたらすだろう。
逆にここで放り出せば、未だ確立しない成果を他国に奪われ、国際競争上大きな失点になるだろう。
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・研究の規範としての効果:
宇宙開発は飛び抜けて目立つ。中でも「はやぶさ」チームは目的意識、努力と粘り、研究の効率や成果など、全ての研究者の規範だ。
逆に、意義を広く国民に認められたプロジェクトを「途中で放り出す」ようなことが他の研究分野でも行われたらどうなるか、考えるだに恐ろしい。
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2007-09-29 (Sat)
☆ posttdiary-ex.rb
v1.65リリース。バグみつけたんで小修正。
☆ ふと思った
「叩き」と「建設的な批判」は紙一重だな。ネット上で「叩き」が流行ってるような話は聞くけど、もう一歩進めれば…
Written by "バカ殿"さくらぃ
[利用上の注意]
・ たけ [お久しぶりです。 こういう話をきちんと話せる,理科教師,大学教員が非常に少ない事を悲しく考えます。私の場合,高校(..]
・ さくらぃ [小学生にも太陽電池を理解してもらう、というのは難問ですね。突き詰めていくとすぐに量子論の世界まっしぐらなので、あさり..]
・ さくらぃ [ここにあったやや恥ずかしい酒場談義、ひとまず削除。]
・ はなくま [ へんな 来かたをしましたが、素晴らしいですね。 まったくしろうとで、ほぼ、パー同然!(禁語かも) で..]
・ ほりほり [さくらぃさま、はじめまして。いつも黙って参考にさせていただくだけで、申し訳ないのでとりあえずごあいさつだけはと思い、..]
・ さくらぃ [応援ありがとうございます。なによりの励みです。 今後ともよろしくお願いいたします。]