壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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2008-04-07 (Mon)

ツッコミ

プルサーマルについて述べた記事(日経BP)。全体的には悪くない内容だと思うんだが、困ったことに、再生可能エネルギーに関するデマが含まれている。「原子力発電は太陽や風力など自然エネルギーを利用するより二酸化炭素(CO2)の排出量は少ない」などとはもう言えないし、そもそもそのような比較をするのが無意味な程度の違いしか無い。(なお、このエントリは原発に関する公称値が信用できると仮定した上での話だ。後述。)

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とりあえず太陽光と原発に関して、絵にした。

まず、排出量はどちらも同水準だ。いずれも化石燃料に対して非常に小さいとされ、想定条件を変えても、排出削減量の変化は誤差程度でしか無い。

単純な排出量での比較

ついでに言えば、現時点で単純な排出量だけを気にするならば、昼間の排出量削減の方が緊急性が高い。

使われ方の違い

そもそも、両者は全く活躍分野が異なるし、

それぞれの得意分野

どちらか一方だけで用が足りる訳でも無い。

間違った使い方

ただし、水素とか蓄電などの技術が安くなるに従って、それぞれの融通の無さは緩和される。またそれぞれの発電コストも変わり、それに伴って、適した利用範囲もまた変わっていくことになるだろう。

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結論:

原発と太陽光について、

・排出量の大小で優劣を論じようとするのは、ナンセンスである。

・どちらか一方の方式だけで全電力需要を賄おうとするのも、ナンセンスである。

それぞれを得意分野で活かすのが、最も適切であろう。(そもそも、上記のスライドでも、それぞれの違いの一部しか述べていない。)

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ややこしくなるので太陽光に絞ったが、他のREについても補足。

・バイオマスはどんなケースにおいても必須。水力を除けば、原子力も太陽光も風力も、どれも需要の変動への対応が苦手だ。バイオマスが足りなければ、その分だけ余計に揚水や蓄電に頼ることになるだろう。

・風力は「再生可能エネルギーで比較的安い」「小規模分散型(原子力との違い)」「地域によっては太陽光より適している」などの特長がある。使わない手は無い。

・地熱:「再生可能エネルギーで安定出力」「燃料価格の変動がない(原子力との違い)」などの特長あり。冷遇されて来たが、「高温岩体発電」の技術開発がだいたい済んでいて、現実的に利用可能な資源量もけっこうあると聞く。宣伝が足りないのが目下最大の問題だが、これも活用すべき。参考リンク:日本の地熱エネルギー

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なお、世の中にはこれらREについて、20年近くも前の、現在とはかけ離れた条件のデータを、出典すら示さずに使う方も居られる。うちがこんなリリースを出したのもそのためだ。…立場のある方が、長所を否定するような誤った情報を流すのはいい加減にご勘弁下さい。国益を損ないます。

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というかぶっちゃけ、そのような古すぎて誤った情報を流されているのは、主に原子力畑の一部の方々だ。上記の議論では、そうした方々が用いる数字も参照しているが、指摘されてなお誤った情報を流布させる方々の数値がどこまで信用できるのか、正直言って疑問も覚えていることを付記しておく。

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一方、最初この記事を見たときは怒ったけど、この鳥井という方は満遍なく様々な温暖化対策を取り上げておられるようなので、今回はたまたまそういうガセネタに引っかかってしまっただけではないかと思う。

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最初のスライドのリファレンス:

[1] NEDO委託業務成果報告書「太陽光発電評価の調査研究」、太陽光発電技術研究組合、

 2003年3月 (報告書バーコードNo.010019372) に2006年時点での値を追加

 http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/feature/feature_1.html

[2] 電中研レビューNo.45, 第4章

[3] 中央環境審議会 地球環境部会「目標達成シナリオ小委員会」資料、P.86

[4] "Life cycle assessment of offshore and onshore sited wind power plants based on Vestas V90-3.0 MW turbines"

http://www.vestas.com/NR/rdonlyres/CB1E6A32-EB4E-4845-9451-4B5255BBB111/0/LCA_V9030_20MW_onshore_og_offshore_samt_energibalance_202005.pdf

([1]〜[3]は寿命30年、[4]は設計寿命の20年を想定。いずれも温帯の標準的な条件で計算)

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注:

[2]には論拠が記されていない太陽光発電の値(53g-CO2/kWh)が載っているが、この出典は電中研ニュース No.338 (2000年)と思われる。8年前の推定値であり、日本の現状と一致しない。

将来の削減の可能性には言及しているが、詳しい計算条件は不明。

(4/10追記)訂正:上記はさらに古い資料が出典であった。発電システムのライフサイクル分析、研究報告Y94009, (財)電力中央研究所(1995年3月), p.16−つまり、13年前の推定値である。

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参考:

欧米での様々な条件における調査結果が下記にまとめられている。

・ V.Fthenakis et al., Environ. Sci. Technol. 42 (2008) 2168-2174.

また日本においても現在、再評価の作業が進行中。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
taketori (2008-04-08 (Tue) 11:54)

posttdiary-ex.rbのページがスパマー(?)によってリンク集に‥‥‥。<br>元の内容に戻せますか?

さくらぃ (2008-04-08 (Tue) 12:30)

ぎゃー(@o@;<br>通報ありがとうございます。あとで直しときます…うーん、どうすっかなこれ(汗


Written by "バカ殿"さくらぃ
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