壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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2008-07-18 (Fri)

ゴア声明の件

米国の電力は10年で化石燃料から脱却できるとゴア氏(読売)。ご本人の声明。…とりあえず、技術的には充分可能だわな。太陽光&太陽熱だけで資源量は充分、そのうえ地熱や風力もある。そこまで量産すりゃ安くもなる。10年で、となれば相当気合いを入れて投資しなきゃいけないはずだしいろいろ細かい問題も起こるだろうけど、それも要はやる気の問題だ。(もう少し年数をかけるのが現実的だろうとは思うが。)

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ちなみに、こういう想定でよく持ち出される”批判”が太陽光や風力の出力変動なんだが、実用上は問題ない。安い順に言うと

・分散配置による慣らし効果

・系統の強化、他の電源との連携による平滑(マイクログリッドなども含む)

・蓄電(or フライホイール、圧縮空気、etc)

などの対策がある。実際こんな例も報告されているし、そもそもその前から米国の電力会社(PG&Eなど)で大規模な試験も行われて、実用に問題がないことは随分昔からわかっている(「スモール・イズ・プロフィタブル」参照)。

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日本の場合、(直射日光を多く必要とする)太陽熱発電の利用には気候が向かないという弱点はあるが、少なくとも「ドイツなんかだと他の国から電力を輸入できるから…」というのは言い訳だ。ドイツは水力が少なく、輸入分を合わせても電力の12%でしかない(IEA, Electricity Information 2005)。日本には輸入は無いが、電力の10%に及ぶ水力がある。(日本で需給ギャップの調整が難しいと言うならば、それは原発が多いのが主因だ。需給調整にコストが要ると言うならば、そのコストは原発にも帰せられる。)

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系統強化にかかるコストはケースバイケースなので、導入量が増えるに従って、蓄電を入れた方が安いケースも出てくるだろう。蓄電をつけると電圧も周波数も力率も自由自在の最強電源になるので、変動の問題はなくなる。…で、実は蓄電は(独立電源のように)何日分も貯めなくても、数分〜数時間程度貯めれば充分だ。

ここで蓄電設備の市価は全部ひっくるめて10万円/kWh程度で、太陽光に2時間分の設備を付けた場合ならコストアップは3〜5割程度。これも経験効果による値下がりが期待できる(いまは原料が値上がりしてるので値上がり傾向だが)ので、蓄電ですら、普及すれば充分実用的なコストになりそうだったりする。

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ということで普及が遅いのは、今はもう技術的な問題よりも、政策とかビジネスの問題になっていると言える。

もちろん技術開発だって今後も必要だが、それはむしろ国の競争力とか貿易収支とか自給率などの面からの要請だと言って良いだろう。

米国についての記述と紛らわしかったので推敲。(7/21 0:05)

ぷにぷに

もう報じていただいてますが、フレキシブルCIGS太陽電池。26日の一般公開で展示するかもです。詳細は成果報告会石塚から報告されます。本人は学会でおりません。ポスターのみです。

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フレキシブルは用途が広いから、今後期待の分野ですよ。防音壁とかスレート屋根とか、如何っすか。

コメントにフォロー

インジウムの資源量ですが、一言で言いますと、当分心配いらなさそうです。

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インジウムは亜鉛などの副産物としてしか生産されてない(色んな鉱石に含まれてるけど殆ど使われずに捨てられてた)ので、どれだけ資源量があるか、というのはあまり真面目に見積もられていないようです。

USGSの見積もりだと3000t弱などとなってますが、これは集計対象の鉱床が随分限られているようです。この専門企業のレポートにあるように「回収技術も上がってるから、実際に使える量は昔言われてたよりずっと多くなる。そもそも銀よりずっとたくさんあるはず(そして使用量はまだ桁違いに少ない)だし、リサイクルも出来るから大丈夫(意訳)」という状況ですね。

日本での最近のレポートでは、埋蔵量はUSGS推定値の10倍以上、約30000tとされてます。

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CIGS太陽電池での使用量は1kWpあたり15〜20gぐらいですので、10000tあたり数百GWp生産可能、という計算になります。全世界の電力需要を満たすにはちょっと足りないですが、それでも現在の日本の累計導入量の数百倍ですね。

もちろんリサイクルも可能(NEDO報告書010019372など)。

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インジウムを節約する方法もいろいろ検討されていますが、CZTS(Cu-Zn-Sn-S)系などが有望ですね。将来はこうした材料に置き換わっていくのかも知れません。

FIT入門更新

ビジネス版にFAQ追加と一部スライドの改善。

そろそろ パブリックコメント も書かないといけないな。

「緊急提言」と言いながら、思いっきり足を引っ張ってくれてるから。

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原子力は「技術の1つ」に過ぎない。これがあるからと言って、他の技術の足を引っ張るのは非合理的だ。他の技術の長所の恩恵に与れなくなる分、どんな形にせよビジネス的にも損になるはず。

本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]
dai (2008-07-18 (Fri) 16:20)

 CIGSの資源量に疑問を持っています。<br><br> 太陽電池の報道を見ると「シリコンの資源制約が問題になる中、CIGSが注目され、、、」とある一方、液晶テレビの記事を読むと「インジウムは産出国が限られ、資源制約が、、、」。<br> 何を信じたらいいんでしょう?

さくらぃ (2008-07-18 (Fri) 21:29)

上にフォローしましたが、少なくとも、それなりに大きな市場シェアを供給できる程度の資源はあると考えられてます(だからこそnanosolarや昭和シェルが大々的に生産しようとしているわけで)。<br><br>あとシリコンも別に「資源の制約」があるわけじゃなくて、たんに「精製した原料の生産拡大」のペースが追いついていないだけですね。<br>競合相手がいないので結晶Si原料メーカーは生産を抑制して高値に保っていたわけですが、ここでCIGSや積層Si薄膜などが出てくると<br>…あとはご想像にお任せ。:)

しばた (2008-07-19 (Sat) 02:30)

また来てしまった。<br>>出力変動なんだが、実用上は問題ない。<br>さらっと言われてしまうと、推進側も批判側も言いたいこと言ってるだけやんとさめてしまうな…<br><br>周波数変動を抑えきれるのはいいとこ分散電源が10%くらいって認識は最近の記事とか見ても変わってなさそうに思える。<br>離島とかだと風力設置したら数%で実際に問題が起こったりしたこともあるわけだ(5年以上前の話だが)<br><br>一気に普及させるなら現状蓄電池とセット必須(=電池もパネルも半値)って日経の記事はある程度納得できたけどな。

さくらぃ (2008-07-19 (Sat) 14:54)

あ、話がまぎらわしくなってしまったな、すまん。君の認識で合っとるよ。<br><br>アメリカだと太陽熱が使えるので、蓄熱して平滑化した出力が得られるのだ。蓄えが不足した時だけガスタービンを使う、という運用がスペインなどで行われてる。<br>日本だと太陽熱は向かないし原発も多いので、太陽光で電力の10%以上(設備量で100GWp)まかなおうとするなら蓄電も使うのが合理的だよ。<br>離島の話はまぁ当たり前だが、系統が弱いところはある程度似たような状況になる場合があるので、蓄電はそういうところから使われるかも。<br>_<br>ちなみに、日本では既存の熱水資源に頼らない地熱(高温岩体発電)資源が38GW分以上確認されてたりするので、再生可能エネルギーで供給できそうな量は案外多い。<br>マグマだまり近傍に管突っ込んで発電なんて未来構想もあって、こいつだともっと桁違いの資源量があるそうな。

しばた (2008-07-19 (Sat) 15:41)

地熱にはなぜかロマンを感じるな<br>ところで地熱って再生可能にカウントされるものなん?莫大ってだけで使うだけ減るイメージだが、地球全体で循環してるものなんだろうか。<br><br>まぁんなこと言い出したら太陽もか:p

dai (2008-07-19 (Sat) 21:25)

周波数変動の逸話<br> 鹿児島県A島で最初の家庭用太陽光発電を設置した際、UF(周波数低下リレー)が作動して、連系できなかった。<br> 連系に立ち会った九電の方は「ほら、太陽光発電は周波数が不安定だ」と宣ったのだけれど、実はA島の系統周波数が既定値を外れていたことが判明(太陽光は半導体制御なので、周波数は外れない)。<br> ということで、パワーコンディショナのUF・OFの設定値を、標準値より大きくすることで決着しました。

dai (2008-07-19 (Sat) 21:39)

すいません。あと、セレンもフォローお願いします。

さくらぃ (2008-07-20 (Sun) 10:33)

あいあい。ちょっといま出先なのでフォローは夜まで待たれたし。

さくらぃ (2008-07-20 (Sun) 22:50)

セレンですが、火災遭遇時や、ひび割れ+酸性雨の条件を想定した試験が既に行われています(NEDO報告書 010019368)。なおNRELでもやってるはずですが、すぐに見つかりませんでした。<br>火災だとさすがにある程度蒸発してしまいますけど、ガラスがあるので危険な濃度になったりはしない、と報告されてます。酸性雨は、そのぐらいじゃ溶けませんし、溶け出しても微量&土壌で吸着される、ということで、こちらも大丈夫。<br>_<br>モジュールをわざわざ粉砕してから焼いたり吸い込んだりしない限りは大丈夫のはず(たしかNRELがそこまでやってたと思うのですが…)。<br>_<br>なお、セレンは元々多くの哺乳類にとって必須元素で(サプリメントに入ってたりします)、ある程度の量なら長期に亘って摂取しても安全です。もちろん過剰摂取はいかんですが。人間でも欠乏症が知られてます。<br>http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail682.html

さくらぃ (2008-07-20 (Sun) 23:02)

地熱は地球が持つ熱に由来するわけだが、今まで30億年でその10分の1も冷えてないようだ。<br>http://wwwsoc.nii.ac.jp/grsj/intro/introduction.html<br>だから一度使って冷えたところも、放っておけばまた地球内部からの熱で熱くなるはずだね。<br>いつか地球そのものも冷えてしまうから再生可能じゃない、という主張も確かに成立するが、そんな屁理屈を言ってる暇があったら、その前に人類が滅ぶことを心配すべきだね。

dai (2008-07-21 (Mon) 10:32)

セレンの資源量は大丈夫、ってことでしょうか。<br>というか、関係してきそうな資源の信頼できる賦存量や生産見通しは一回きちんと勉強した方がいいですね。というか、多分NEDOあたりで評価しているのでしょうね(イマイチ信用できない場合もありますが)。

さくらぃ (2008-07-21 (Mon) 12:19)

ありゃ、セレンの質問というと大抵毒性のことなんで、勘違いしました。 <br>使用量は1kWpあたり150g前後の計算で、埋蔵量はUSGSの見積もりで170000tです。 <br>http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/selenium/mcs-2008-selen.pdf<br>In同様、全世界の電力には足りないかも知れないけど、他の用途に幾らか残しても数百GWpは生産できる、という状況のようです。 <br>_ <br>ちなみにセレンは色が黒い他は硫黄と良く性質が似てます。さわっても平気だけどほんのり臭い。

さくらぃ (2008-07-21 (Mon) 16:49)

すみません、計算間違えてました(装置に突っ込んでおく量で考えてました)。<br>太陽電池に実際に使われるセレンの量は1kWpあたり32gぐらいです。TWp単位の生産に見合う量がありますね。…だから心配されてないのか (^^;;

さくらぃ (2008-07-21 (Mon) 16:57)

検算用データ:<br>CIGS太陽電池の効率:現在の市販品で11%前後、メーカーの記録で14%ぐらい、うちのミニモジュールで15.9%。近い将来の値を15%と置いて良いと思います。<br>CIGS層の厚み:約2μm (1〜3μm;将来的にはもっと薄くなるかも)<br>CIGS層の代表的組成:Cu24% In16% Ga10% Se50%(他にもSeの代わりにSを使ったり、色々バリエーション有り;出典をうちのセンターにして頂いて構いません)<br>比重:インジウム7.31、セレン4.79 (理化学辞典第5版)


Written by "バカ殿"さくらぃ
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