壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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2008-08-21 (Thu)

導入効果検討

先日来作ってる謎資料がだいぶ形になってきたので載せときます。興味ある向きは どうぞ

・8/26 update: 概算額の表示がおかしくなってたのを修正、火力のコスト変化を分ける、補足やFAQ追記などを行いました。排出権などの火力のコスト要因はドロップダウンにしたので、適当にいじってみて下さい。

・9/1 update: パラメータ整理、FAQ追記など

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シミュレーション例開始時点の原油価格が90$/bbl、排出権価格無視、火力コスト+0.5%/年の場合の試算例。無断での引用や転載はご遠慮下さい。

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各方面からのご指摘に従って、

・なるべくわかりやすく&グラフ化

・2031年以降の設備費に絡んで、利益を過小評価してたのを修正

・導入利益や輸出益など、視点別に分けて記述

・その他の導入利益についても追記

・簡単なFAQ追加

などの改良を加えてみました。

# 経営の知識をもっと仕入れないといけないですな…。

_

たとえば、下記のようになります。

_

設定条件(数値はExcelファイルの中で変更可能):

・2020年までに20GWp、2030年までに80GWpを導入

・価格低減のペースは80%@生産量2倍

・競争力を保ち、生産量の6割を輸出

・火力発電コストの上昇ペース:0.5%/年

・現在の貨幣価値で計算

_

必要な費用など:

・太陽光発電の普及促進に必要な助成費用は、最大で年間2000〜3000億円ぐらいになります。単年度で黒字になるまでの20年間の累計で、約4兆円になります。

・一般的な一戸建ての場合、負担する額は最大で月額70〜150円ぐらいになり(条件にもよる)、約20年で終了すると思われます。

・単年度で助成費用を含めて黒字になるのは2030年頃になります。火力発電のコスト(燃料費とか排出権とか)が値上がりすると早まり、値下がりすると遅くなります(2020〜2030年頃の値動きでだいたい決まります)。

・累計で「元が取れる」までには、さらに10〜20年ぐらい(現在から30〜40年)かかると思われます。(ただし、輸出利益や波及効果などは含んでいません。)

・火力発電所の運転量を減らすので、系統をあちこち改良する必要性も生じます。(これはどのみち(原子力や風力でも)避けられない出費です。この予測では考慮していません)。

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得られる利益:

・生産コストや流通コストが下がることで、太陽光発電が火力発電(現時点でだいたい10-20円/kWh)よりも安くなると期待できます。

・国全体でみた発電コストが、その分安くなります。その利益は2020年頃の導入分から発生しはじめ、2050年頃には全体的な節約額が年間数千億円単位(火力のコスト推移次第では1兆円以上?)に達する可能性があります。

・基準年を1990年とするなら事業用電力由来の排出量の17%、国全体の排出量の3.9%を削減できます。

・80GWpの設備で日本の年間電力需要の9%、晴天時のお昼頃なら電力の3〜5割ぐらいを供給できます。

・多少の蓄電池も付けてさらに増やせば、倍以上の200GWpぐらいを導入できると思われます(蓄電池についてはファイルの「FAQ」シートを参照ください)。また、その頃には蓄電池をつけても実用的なコストになると期待できます。

・事故や災害に強いなどの特長によって、電力供給全体の安定性や信頼性を高めることができます。

・輸出競争力が保たれれば、輸出額は年間数兆円の単位になると思われます。

・応用製品(自動車・船・建築・各種独立電源など)や関連産業(半導体全般・ガラス・樹脂・電力制御・蓄電・産業ロボット・微細加工・情報通信・保守・保険・投資等々)への波及効果が期待できます。

・温暖化対策が進むことで、温暖化による直接的なリスクも低減されることが期待できます。

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このように、かかる費用は大きいのですが、30〜40年間で回収され、波及効果や環境保護などの利益も得られることが期待できます。

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これに対して、

(海外で安くなるであろう)2030年まで全く導入せず、国内生産の競争力も失った場合は:

・純粋に発電コストと助成費用だけで比較しても、助成した場合に比べ、兆円単位で損になると思われます。

・国内で必要な設備を輸入に頼ることになり、輸入額の累計が数十兆円に達する可能性があります。これは国外への資金流出を招き、国の貿易収支や国内経済の悪化要因になると思われます(参考:現在の日本の貿易黒字は年10兆円ぐらい)。

・輸入コストの分、コストが高くなります。1割高くなっただけで、数兆円単位の損害になると思われます。

・国内ニーズに合った製品が得られにくくなり、保守や修理にかかる時間や費用も増えると考えられます。自動車などの応用製品にとっても、不利になると思われます。

・導入が遅れる分、排出権購入などでの国外への資金流出が増大します。化石燃料が値上がりした場合の影響も、その分大きくなります。

・温暖化対策が遅れ、政治的・経済的に不利になると思われます。

・期待できたはずの輸出利益を失います。

・関連産業への波及効果が失われ、国際競争上も不利になると思われます。

などの損失が予想されます。

_

…如何でしょうか。

10/10: ファイルの内容を抜粋していろいろと追記。

本日のツッコミ(全9件) [ツッコミを入れる]
tamuyou (2008-08-22 (Fri) 10:33)

基本的に間違ってないと思うんですが、大きなロジックとして「太陽光発電できる時間(昼間かつ天気が良い時間)の電気代を減らせるかもしれないけど、太陽光発電できない時間の電気代には影響しないんですよね?「定性的影響シート」にもかかれてますが50GWp以上になったら、蓄電する技術が開発されていない以上効果を頭打ちで計算しないとまずくないですかね。助成制度が導入に効果があるのは間違ってないとおもうけど、その効果が今回の計算だと過大評価されているような気がします。

さくらぃ (2008-08-22 (Fri) 12:43)

ああ、それは私も困ったのですが。<br><br>そのへんは電力システム全体の将来のシナリオと絡むのですが、そのシナリオ自体がかなり未定なんだそうで。というか、将来が読みにくい状況らしく、むしろこれから政策的な誘導が必要なようです。<br>ただ現時点でも、下記のようなことは言えます。<br><br>・蓄電の技術自体は、とりあえず使える程度の技術は既にあります (^^;<br>・80GWp導入でも、蓄電が殆ど要らない場合が考えられる。<br>・蓄電をつけるにしても、各家庭につけるよりも地域単位などで入れて多様に活用した方がずっと有効に使えるだろう<br>・蓄電をつける前に、系統でできる対策を先にやった方が安上がりになるだろう。<br><br>もちろん対策の形態のひとつとして「太陽光に蓄電をセットで個別に導入」というのも考えられます(企業では停電対策にもなるかも?)。<br>ただその場合は単純に混ぜられる話ではなくて、<br>「蓄電なしの目標量は70GWpにへらして、そのかわりに蓄電付きの設備の目標量を10GWp分として(最初から助成すると高すぎるので)○○年後から別枠で助成しよう」という話になると思います。当然経験効果も違ってくるので、単純に混ぜられないです。<br><br>ファイルの補足にも書いてますが、原発や風力を使っても、火力をへらしていくと系統強化なり蓄電なりの対策が必要になると思われます。でもおそらくそれは太陽光のFITだけに含めるような話じゃなくて、それ自身が独立した温暖化対策として出費が議論されることになるでしょう。このあたりは欧米でも最近議論が始まっています。<br><br>実際の所は、当面は「蓄電無し」の導入を進めて、蓄電池の動向も睨みながら系統強化や蓄電も入れていくことになるのではないかと思います。<br><br>-----<br><br>ここではっきり書いときますが、<br><br>・温暖化対策はここで対象としている「蓄電のない太陽光」だけで済む話ではなくて、これは対策の始まりにすぎません。この対策で利益が得られる頃には、別の対策に対する出費が必要になっているだろうと思われます。<br><br>それでも数ある対策の中では、発電部門での対策は省エネに次いでもっとも出費が少ない(&利益に繋がりやすい?)対策と考えられてます。<br>そろそろ日本も腹をくくって積極的に動かないと、貴重なビジネスチャンスをどんどん失うんじゃないかな。<br><br># 経済的影響の観点だけで話してるつもり。念のため。

さくらぃ (2008-08-22 (Fri) 12:56)

ちなみに、たとえ系統を全く強化せずに蓄電だけで対策をした場合でも、せいぜい2時間分ぐらいの蓄電で用が足りるみたいです。すくなくとも、一部で言われてるように「7時間」なんてことはない(この7時間ってのは昔の報告書で適当に仮定されただけの値だそうな)。

zonnecellen (2008-08-24 (Sun) 15:51)

ごぶさたです。晴海ではお互い忙しく、話もできませんでしたね。<br>ところで、横道にそれて恐縮ですが、8月22日の読売の社説どう思います?<br>500円って、数字間違えてませんか?

さくらぃ (2008-08-25 (Mon) 21:59)

ども。いや、3日で千人ぐらいお相手したかも…。<br>んで約3EUR(500円)ってのはドイツのFITへの出費の最大値ですが、これはバイオマスや風力まで全部ひっくるめた額ですね。そのうち太陽光が現在占めてるのは3割で、実質1EUR弱(約150円)ですね。<br><br>でも太陽光だけで対策できるのは、国の排出量全体の10%ぐらいまでです(私のこのシミュレーションは4%相当の設備量が想定されてます)。2050年までの残り(40%以上)は他の対策が必要なはずなんで、そのぐらいの覚悟を今からしておいた方が良いのかも。

さくらぃ (2008-08-25 (Mon) 22:01)

ドイツFITのコストの報告書です。12ページのFigure3に、各対策への割り振りがまとめられてます。<br>http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/eeg_kosten_nutzen_hintergrund_en.pdf<br>ご参考まで。

tamuyou (2008-08-26 (Tue) 09:34)

今朝の朝日新聞に家庭用太陽光発電に補助復活!と記事ありましたね。これで導入が増えるのかどうか・・・今後が楽しみです。

さくらぃ (2008-08-26 (Tue) 23:06)

とにもかくにも、気に掛けていただけるのは嬉しいですし、これで1年は猶予ができるかもしれません。<br><br>でも長期的な投資環境を整えるのが一番重要で、これがないと効果が薄くなります。今後どれだけのお金をかけてどれだけの効果を得るのか、計画的に進めて頂きたいところです。

さくらぃ (2008-08-28 (Thu) 00:48)

ちなみにこれ、もしも旧来の「設置時の直接補助金」主体だったら、その時点で効果不十分なのは確定だろうと思います。10円で100円の飴を買おうとするようなものですので。


Written by "バカ殿"さくらぃ
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