2009-12-02 (Wed)
☆ おおいそぎ?
・買取制度、他の自然エネにも拡大&全量導入の方向で検討中(47News)…矢継ぎ早の検討スケジュールになって、関係者の方々には本当に頭が下がります。_(_._;;_
3月までに検討が済む&政令改正だけで対応可能としても、タイミングぎりぎり。だけどもしそれができるならば、それに越したことはないだろうと思います。いや、準備が大変なのは承知で言ってるんですが(汗)
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というのは太陽光一つ取っても、来年あたりからまた市場が元の「年4〜5割増で拡大」なペースに戻るだろうと言われてるし、風力なんかこの不況下でも伸びていて来年も言わずもがな。そしてそれらの増加に伴う電力制御技術や蓄電等も、当然…という状況なので。
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さらに、似た事は電力供給だけじゃなくてクルマとか省エネとか他の分野にも言えるでしょう。
そこまで考えると、今は一日どころか、一分一秒が惜しいのでは。例えば対応の遅れ1時間あたり10億円ぐらい、今後5年間の日本の貿易収支から失われるんちゃうかと。加えて化石燃料の価格変動リスクなどまで考慮したら、どうなることやら。
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そんな「世界の産業構造そのものの急速な変化」まで織り込める経済モデルって、どうも日本に無いらしい。というか、経済モデルに頼るのは基本的にフォアキャスティングの考え方で、これまで出てきた限定的な結果だけを見ても、不確実性が大きい。
だからこそ各国はバックキャスティングに切り替えて、「望ましい道からずれすぎないように、走りながらその都度修正をかけていく」方向に進んでいるのでは。
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というわけで、急げるところは急ぎ、手を付けられるところはどんどん始めたら良いのではないか、と思います。それで何か問題が出てきたら、その都度修正をかけて、負担を許容範囲内に収めるのが肝要かと。
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あと太陽光の制度的な話では、
・公共・産業用やメガソーラー等への全量買い取り導入から手をつけるのが、優先順位(費用対効果)が高いんちゃいますか。助成水準の微妙な調整が求められますが、手っ取り早く量が稼げるので世界のペースと合わせやすくなります。
・住宅用も全量買い取りに変えるならば、それまでの間、助成が途切れないことが重要と思います。そうでないと各方面に無用の混乱を招いて、損かと。
2009-12-09 (Wed)
☆ ゆでガエル
日本のエネルギー用途の化石燃料の輸入額の推移をグラフ化。財務省の貿易統計から作成されたもの。
ほんの10年前までは毎年5兆円程度だったのが、23兆円にも増えている。主因は価格の上昇。実に4倍以上になっている。
こんなに増えてたら、国内の暮らしもきつくなって当たり前だろう。
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排出量の削減費用で騒いでる人達(特に、石油に縁の深い某研究所)が居られるけど、その方々には
たった一年で国の金を18兆円も余計に流出させて何を言ってますか
と問いたい。
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火力発電は、もう昔みたいに安くない。良く言われていた発電原価が「5円」というのは、原油生炊きの火力だと30$/バレル以下の価格水準に相当する(しかもこれは、排出権のコストを算入していない値だ)。つまり「火力の発電原価が5円」というのは昔の原油が安かった時期の話で、今は当てはまらなくなっている。
今の原油の相場(70$/bblぐらい)だと、その倍以上になる。2008年に至っては25円/kWh超えたりしたし、比較的安いガスですら十数円/kWhに達してた。
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それで原油の価格が今後安くなる保証があればまだ使いたいと考えるかも知れないが、実際はオイルサンド(コールタールに砂が混じったようなもの)とか北極海の海底まで掘ろうとしてるわけで、質の低下や採掘コストの増大は疑いようがない。
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そもそも化石燃料なんてジャンク債みたいに乱高下するのに、これに頼ってること自体がリスクだし、コストだ。
☆ 太陽光発電のコスト
んじゃ太陽電池はどうなんだという向きには、まず下記のデータを見て頂きたい。
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今の時点で薄膜のモジュールの最安値が$1.76/Wp、
多結晶の最安値が$1.98/Wp。つまり1kWpあたり18万以下。
パワコンや工事費含めても30万/kWpを切れるだろう。
http://www.solarbuzz.com/Moduleprices.htm (2010.5.2 リンクミス修正。すみません)
日本に設置した場合、償却年数20年としても、既に20円/kWh以下が可能な水準です。
http://www.nedo.go.jp/nedata/17fy/01/g/0001g003.html ←2010.11.1 発電コスト算出式があったのですが、サイト改装でリンク切れ。どこに行ったかご存じの方はご一報下さい。
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それも別に赤字放出ってわけじゃなくて、例えば2008年世界シェア2位のFirstSolarは、製造コストが0.85$/Wpになったそうです。
http://www.firstsolar.com/company_overview.php
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もちろん平均価格はもっと高いし、日本向きのもっと高効率な製品もそれより高い。
でもこの期に及んで「20円/kWh以下になる訳がない」とか言ってる人は、大変遺憾ながら、間違っています。
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もう太陽電池は実用的コストになるかどうか、って段階じゃないです。どこの国や企業がシェアを取るか、っていう経済戦争の段階なんですよ。
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なめてもらっちゃ困りますぜ、お客さん。
2009-12-10 (Thu)
☆ 討論イベント
いけね、こっちでも書くの忘れてた。
・産総研で「排出量削減」をテーマにしたオンライン討論イベントをやります。
覗くだけでも良いですが、お持ちの専門知識の交換や、具体的方策に関する討論の場としてご活用頂ければ幸いです。
また登録して頂きますと、前回のまとめもアクセス可能です。
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期間は11・12・17・18日の計4日間。週末も一日含んでいますので、ご都合の良い時にご参加下さい。
よろしくお願いいたします。
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なお登録は今日までってことになってますが、開催中も受け付けます。
また、討論はファシリテータ付きで行います。
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また今回から試験的にtwitterも運用予定ですので、そちらもよろしくです。
2009-12-12 (Sat)
☆ 感想
なんか日本ってほんっと自分たちの将来を左右するような事項の情報収集とか解析とか対応とかが弱いと感じる。
どんだけ今までアメリカにべったり頼ってきたんだ。
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そんな状態で中国の速さ・的確さ・パワー・交渉力を前にして生き延びられるつもりだとしたら、考えが甘すぎないか。
2009-12-16 (Wed)
☆ 問題と対応
・太陽光発電の助成制度で小型風力発電が困ったことに。これは制度策定段階で思いっきり見落とされていた。
かくいう私も見落としていた。申し訳ない。
しかしこれは助成の目的に反する影響だ。政令で対応できるようにした利点を活かしたいところかと。
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新しいことをすると問題も起きる。けど問題が起きた時の対応次第で、影響は減らせる。
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これで関連して取り上げたいのがドイツで検討中のFiT助成水準の調整。昨年EEG2009を決めたばかりなんだが、今年は値下がりが進んで来年の普及ペースが予定を大幅に超えそうなので、助成水準を見直そうとしている。
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(個人的な予測だが)ついでに助成水準の調整を年一回→年数回に増やすとか、ある程度市場価格に連動して自動的に変えるようにしたりするかも知れない。
ドイツは制度の改良を続けることで普及の実績を積んできたのだし、今後も続けていくはずだ。
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何か問題が起きたら、制度の方を調整して対応すればいい。常に調整を怠らないことこそが、結局は全体の利益を最大化するはずだ。
2009-12-19 (Sat)
☆ メモ
・COP15は正式採択が先送りか。やれやれ。日米などで準備が十分間に合ってないのを途上国側に見透かされてる、という感じなんかな。
しかしあの拠出額約束したんだから、途上国側からも譲歩が欲しいところやな。
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なお、現時点で発表されてる目標では足りないと言われてる。
これじゃ、海抜の低い所におちおち家構えられない。
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・小水力発電や小規模汽力発電の規制緩和へ(環境メディア)。お。いいですな。使える物は何でも使わにゃ。
・直流送電・配電技術が賑やかに(環境メディア)。とにかくロスが減るし、送電線自体ももっと有効に使える。…俺も先日のJAMで教えてもらって気付いたんだが、表皮効果も無いのよね。長距離送電だけでも置き換えたいねぇ。
・トヨタとアイシン、燃料電池システムの実証試験へ。…自動車会社もクルマ売るだけじゃなくて、エネルギーマネジメントや都市全体のデザインに関わる時代になるのかな。
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・今年の太陽電池市場、なんだかんだ言いながら昨年よりさらに5%ばかり増えそう(Solarbuzz)。「顧客は帰ってきた!」とのコメント。…別社の見積もりだと14%減ちゃうかと言ってたんだが、とにかく当初言われていたよりもマシになりそうだ。あのスペインの大暴走(2008年)すら吸収してしまうとはなぁ。
・CIGS太陽電池ベンチャーのSolyndraがIPOへ(PV-tech)。円筒形の変わったセルを製造している企業。…はえーなヲイ。
・同じくCIGS太陽電池のMiaSoleが沈黙を破り、量産へ(GTM)。現在の60MWpを140MWpへ拡張。
・フランスのEDFが太陽光発電プロジェクトに10億ユーロを投資(PV-tech)。FirstSolarモジュールを使用。EDFは先にFirstSolarから生産ラインを丸ごと買っている。
・そのFirstSolarは2010年は29億ドルの売り上げを見込む(PV-tech)。
・Cyrium Technologies、量子ドット効果を用いて40%以上の効率を達成したと主張(PV-tech)…ホンマかいな?とりあえずメモっとく。
・QD Vision、量子ドットを用いた高演色性LEDランプの量産へ(GTM)…発光デバイスの方は一足お先に実用化されそうな雰囲気。
☆ もーたくさん
イランとイラクの間で新たな火種とか。
戦争は勘弁だな。またどっかの国が赤字垂れ流して投資マネーが肥大化するだけやろ。
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そもそも戦争は財物を破壊するんだから、全体的には損になる。アホやんけ。
争うなら、価値の創出で争う方がずっとお得だ。
☆ 骨折その後
ギプスは3週間ほどで取れて、今は土踏まずに包帯の塊を当てている程度。
しかしどうも同時にじん帯組織を傷めてしまったようで、腫れがまだ残っている。この状態で負荷をかけると回復が遅れるので、長距離移動時は未だに松葉杖。
…なんか腕や背中に筋肉が付いてきたよーな(汗
2009-12-20 (Sun)
☆ へっぴり腰
なんか「温暖化対策に投資することには危険がある」な論旨のコラムを見た。やれやれ。
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欧州各国の実績を見ると、確かに危険もある(スペインの太陽光とか)。だがそれを許容範囲に抑え込みつつ利益に繋げることも、また可能だと実証されている(同じスペインの風力とか)。
なのに「危険があるから」と尻込みして、この20年ろくに進められなくて困ってるのが日本の現状でしょう。
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この競争時代に、リスクを取らずして利益が得られるとでも?
のんびりし過ぎではないでしょうか。
2009-12-21 (Mon)
☆ ぼそ
全量買い取りでもっとも避けたいのは、助成水準の過大・過小による暴走や市場の縮小。特に制度変えてすぐってのは、影響が読みにくい。目標からずれたら関係者を集めて再調整、などの申し合わせをしておかれるのが良いかと。
その一方で全量買い取りってのはシンプルで調整もしやすいので、慣れてしまえばラクでええんちゃうかと。
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あと検討課題としては環境価値の分配ですかね。設置者・電力会社・地元自治体などそれぞれにニーズがあるので、関係者で相談して分け合えるような制度にして頂ければええかと。
2009-12-28 (Mon)
☆ 質問に回答
全量買い取りと一口に言っても、色々オプションは有りますよ。
・ちょっと前までのドイツ式が、一番基本的な形態。自分の家の屋根で発電していても、電力も環境価値も全部まとめて電力会社が購入。これは本当に「出資してメンテして屋根を貸すだけ」です。
・2009年からはドイツも、家庭用に関して「自家消費分に25セントのインセンティブを付加」というオプションが追加された。要するに余剰電力買い取りみたいなもの(だけど自家消費分にもちゃんと助成がつく)。
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日本でも、自分のところの消費電力を相殺したり環境価値を確保したりしたい需要があります。それに応えるならば、単純に全部買い上げるのではなく、例えば売電する割合を任意に決められるようにする選択肢もあるかと思います。うまく需要を汲み取れば、その分助成額を安くできるはず。
☆ 費用の目安
10年で自給率20%アップ…ふむ。
ドイツの数字を参考に、ごく大雑把な目安を。2008年の一年間で45億ユーロかけてる。風力・バイオマス・太陽光で大体3分。(そのかわりに化石燃料に払う金が50億ユーロぐらい浮いてるそうだけど。)
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あちらの人口は日本の2/3、で現在の導入ペースは大体「10年ごとに自給率10%アップ」。
細かいこと考えずにこれをそのまま「日本でのペース2倍」に読み替えると、
45億EUR×130円/EUR×1.5×2=約1.8兆円/年
これぐらいのお金をかける覚悟が無ければ、排出量削減は難しい。逆にこれぐらいかければ、たぶん可能。
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一方世界のエネルギー情勢を見るに、どのみち導入しなきゃいけないのは確かだろう。
アメリカは放っておくとしても(おいおい)、中国(やインド)はこのままだと今後アホみたいにエネルギーを消費する国になってしまう。旧式の発電所で石炭ボンボコ焚かれた日にゃ、温暖化以前に風下の日本がたまったもんじゃない。加えて石油や天然ガスなども大量輸入するようになったら、日本ピンチだろう。
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一方、彼らが早期に再生可能エネルギーでかなりのエネルギーを賄うようになれば、これまたピンチだろう。放っておけば、その圧倒的物量と価格で世界のエネルギー業界を席巻してしまうかもしれない。
いずれのシナリオ(もしくは中間的シナリオ)になるにせよ、「ボケッと座して待っている」という選択肢は日本に無いだろうと思う。
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とりあえず、技術的には2020年だって可能だろう。人や資本がついてくるかどうかだけが問題。
でも2020年が2025年になろーが2030年になろーが、とにかく最終的にはやらないとダメだろうと思う。
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つか、ただでさえ自給率低いしな。日本(4%)より低いのって、韓国(2%)ぐらいやで。
2009-12-31 (Thu)
☆ 2009年総括
・お仕事
単著で本を出したのが最大のイベント。さらに講演数十回とか企画で勉強とか盛りだくさん。その節は皆様に本当に多々お世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
世の中は迷走しまくりだけど、それでも少しずつ動き出したかな。
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・プライベート
打ち身でしばらく腕釣るわ、自転車自爆で30年以上ぶりに骨折するわ、とどめに新型インフルでやられるわ…。もう少し健康面で気をつけないといけませんな(汗)
ゲームとかガジェットの面では特に何もなし。
登山もできず。国内旅行はちょこちょこ出来たりして幸せ。
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まぁそんな感じの一年でございました。
Written by "バカ殿"さくらぃ
[利用上の注意]
・ まま [ぶ、初めて見たけど、なんやこのイラストは(笑)]
・ さくらぃ [言うなw]
・ S*O*L*A*R [おこちゃまはダメなんでちゅねw]
・ まま [ちなみに申込締切が「12月3日 金曜日」ってのはおかしい。]
・ さくらぃ [ぶ。たぶん4日(金)の間違い。]
・ しばた [イラスト見た。 さっき入れたコーヒーの補償を要求するw]