壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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はやぶさ2計画絶賛応援中


2010-02-01 (Mon)

CM

今週からまた3つほど講演が続きます。

・2/4(木)13:30〜、大阪:地球環境関西フォーラム (パネリストとして)

・2/5(金)11:00〜、熊本:くまもと産業ビジネスフェア

・2/8(月)16:05〜、豊橋:豊橋技術科学大学 第6回 産官学交流シンポジウム2010

今回、いずれも平日です。火急の用件の無い方はお気軽にどうぞ。

質問に回答

太陽光発電のCO2ペイバックタイムは、日本ではみずほ情報総研が調べた奴が最新。NEDOの報告書DBから20090000000073番の「太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究」を引いたら出てくる。

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CO2PTはP.194(PDFで200ページ目)にある。1.32〜4.17年。最も一般的な多結晶シリコンを家庭で使った場合、1.92〜2.63年。

・日本は輸出もしている(2004〜2008の5年間平均で7割ぐらい、JPEA統計より)が、そのかわりに排出量の6割方を占める多結晶シリコン原料を輸入しているので、輸出入の影響は知れている。

・しかもこれは、原子力を含めた系統電力全体のCO2排出量(344〜413g-CO2/kWh)と比較した場合だ。実際は原子力を減らす訳じゃないので、火力の平均(690g-CO2/kWhぐらい)等と比較する方が当面は正しい。実際のCO2PTはさらに4割ぐらい短くなり、せいぜい1〜2年というところだろう。

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またこの報告書の5章には、日本で導入を進めた場合の排出量削減効果の具体的な試算もある。様々な条件を想定しているが、いずれも即時のCO2削減になる。

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というわけで生産時の排出を理由に即効性を否定する主張は、どこか論拠におかしな所があるだろう。ましてそれを理由に原子力が優位だと主張するのはおかしい(*)し、逆に「そんな嘘を付かないと存在意義を主張できないのですか」と問いたいところ。

(*)…原発は建設に平均10年以上かかってるので、おかしいどころか、思いっきり墓穴な主張。

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ついでに追い打ちかけとくと、

・燃えがらの処理コストを半量しか計上してないのに「算入してます」って言ったり

・その処理コストも工場が平日全て250日ノートラブルの前提だったり

・資材コストが今より安くて稼働率が今より高い想定だったり

・(ピーク対応のコストを論じているのに)昼夜問わずフル稼働の想定だったり

するのをそのまま比較するのはやめて下さいね。恥ずかしいですから。

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ベースロードならそのまま使えばいいと思うが、ピーク対応では必ずしも優位ではないでしょう。”○○万能論”は国の敵です。

屁理屈で人の足を引っ張ってる暇があるなら、韓国に受注を取られたりしない方に力を注いで頂きたいです。敵を間違えていませんか。


2010-02-02 (Tue)

ぼそっ

人は新しい情報を信用するとき、論理的に判断する場合と、雰囲気で判断する場合がある。

ところが雰囲気だけで判断した場合でも、「論理的な根拠があって判断した」と記憶してしまう場合があるようだ。

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そこでさらに、実はその情報が間違っていて、誰かに誤りを指摘されたとしよう。

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「論理的な根拠があったはずなのに、どうしても思い出せない。いやでも私がそう記憶してるんだから、何か根拠があったはずだ。あったはずだ……」

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ということで混乱したり、苛ついたり、意固地になって認めなかったりするのでは。

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んで、そこで意固地になられると、どうしようも無いことも。


2010-02-03 (Wed)

牛山先生の新刊

を手に入れた!(ちゃらららーっ、一歩踏み出して頭上に掲げる)

トコトンやさしい風力発電の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)(牛山 泉)

牛山先生は風力発電の大家で人柄的にも超楽しい先生なんだけど、これまでのご著書は率直に言って、研究や趣味が色濃く出たものが多かった。

でもこの本は違う。もっと実務に近いことがたっぷり書いてある。…もー、これよ、これ!こういうのが欲しかったんですよ。ありがとうございますー。XD


2010-02-09 (Tue)

業務連絡

NEの記事について。環境価値の配分を提案させてもらいましたが、具体的な配分比率は例として出しただけですのでよろしくですー。当事者間で相談して決められるべきものかと。

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というか既に現行の家庭用で環境価値の配分は行われてるんで、余剰電力の出ない公共・産業向けにアレンジしただけですわ。

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あと200GWの話は当然、蓄電池が十分安くなった場合という前提での話です(苦笑)。

まぁ最近の蓄電池の開発ペース見てると、案外早そうと言う気もしますが…みんなが本気になった時の技術の進歩って、えらい速いからなぁ。


2010-02-10 (Wed)

ぼそっ

荒っぽく言ってしまえば、研究所とは「出る杭」を見つけて伸ばすための組織だ。「出る杭」にはえてして短所もあるが、長所を伸ばすことで全体的な利益を狙う組織だ。

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しかし、そこで”短所を叩く”ことだけに注力するのは、果たして国益に適うだろうか。

メモ

動向全般については最近は日本語のニュースも多いから、適当にgoogleで検索して貰えば良いとして。特に俺が面白いと思ったものだけ。

IBM, Cu-Zn-Sn-S-Se 太陽電池で9.6%の効率を確認(GTM)。いわゆるCZTS系太陽電池。同様の構造を持つCIGS(Cu-In-Ga-Se)に比べてまだ半分の性能なんだけど、材料がどれも安くて豊富っつー特徴あり。しかも真空を使わないプロセスで。…そろそろ火が点いたかな。日本でも長岡の方々が開発している

日本の2009年の太陽電池国内市場、約500MWに急回復(PV-tech)。…なんとか間に合ったかな。今後は世界と歩調を合わせたペース(年3割前後?)で伸ばすと、たぶん国全体で見て一番利益を増やすだろうと思う。速すぎても遅すぎても損なはず。


2010-02-12 (Fri)

反撃

COP15を狙って流されたIPCCに対する各種攻撃に、科学者のコミュニティが反論[文書本体]

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長たらしいので、要点をいくつかピックアップ。

・IPCCの評価報告書は包括的かつ透明な仕組みを通じて書かれている。人間は必ずミスをするが、IPCCはそれを補うために2千人以上もの専門家による査読を行い、信頼性を高める膨大な作業を行ってきた。ミスは小さなものばかりであり、また見つかったものは訂正されている。

・ヒマラヤの氷河が2035年までに全て無くなることは無い。しかし氷河の後退が地球規模で発生していることには変わりない。数億人の飲料水の確保が危機に晒され、また海水準の上昇も懸念される状況である。

・アマゾンの乾燥や火災の危険性に関して引用ミスが見つかったが、記載されている科学的事実そのものは正しい。さらにIPCCの2007年の報告書以降に発表された複数の研究結果により、この危険性はさらに確実なものとなっている。

・極端な気象現象がより酷くなり、多額の被害をもたらすだろう。これには被害を受けやすい沿岸部に人口や財産が集中していることも影響する。査読されていないデータも使わなければならないことに反対意見もあるが、民間レベルでの影響や対策に関しては十分な資料がなく、現時点では使わざるを得ない。データをもっと揃える必要がある。

・ヒートアイランド現象によって気温の変化の記録の信頼性が無くなっているとの懐疑論者の主張は、誤りである。様々な環境における測定データを比較・補正することで、そのような影響は極力排除されている。

・中国の気温の記録は信頼性があり、かつ首尾一貫して温暖化を示している。(←メールハッキング事件に対応する項目)

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結局懐疑論者らの攻撃は、言葉尻や重箱の隅を捉えて「怪しい、怪しい」と騒いでいるだけだと言える。「IPCCの結論は揺らがない。」

宣伝

お仕事で頼まれたので宣伝。

・来週15(月)〜16(火)にナノテクのワークショップをやるそーです。

19日にはビッグサイトでナノテク展

わりと動きが速くて、どんどん動いてる感じです。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

dai [PVのEPRが低いなどと、言ってるヒマはない?→http://jbpress.ismedia.jp/articles..]

さくらぃ [オイルサンドは性能悪そうですね。さすがにEPR=1.5ってのは例外かも知れませんが。]


2010-02-14 (Sun)

全文訳した

件の懐疑論への反撃について。

ざくっと全文訳したので置いときます。(原文はこちら。)

非公式訳ですが、UCSに転載許可を頂いています。また日本の専門家にも一読頂いて見つかった誤りは修正してありますが、簡単なチェックだけですので、ご利用は自己責任でお願いいたします。誤訳・抜けなどありましたら、適宜ご連絡頂ければ幸いです。

(最終更新:2010.5.2 22:50。バグ取り感謝>各位)

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Below is an (unofficial) Japanese translation of "Attacks on the Intergovernmental Panel on Climate Change Obscure Real Science", of which the original text was written by the Union of Concerned Scientists (UCS). I thank UCS for their vigorous efforts, and for kindly giving me the permission to put up this translation here.

I have fixed the mistakes in this translation that were found so far, including the ones found in the quick checks by some experts in this field. But please use this translation at your own risk.

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IPCCに対する一連の攻撃は、正当な科学を妨げるものである。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2007年、気候変動に関する広汎な(*0)報告書を出した。IPCCは最近数ヶ月にわたり、この報告書にある幾つかの小さな間違いについて攻撃を受けてきた。物事を正し、科学的かつ適切に状況を伝えるため、憂慮する科学者同盟(UCS)は特定の攻撃に対し、独自の(*1)解説を作成した(原文)

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端的に言えば、IPCCの結論は揺るぎないものである。気候変動は現実のものであり、人類がその原因である(*2)。世界中の国々が、ある程度以上の気候変動(海面上昇、降雨パターンの変化、農業への悪影響、種の絶滅等を含む)への適応を強いられる。しかし人類が排出量を大幅に削減すれば、気候変動による最悪の影響は避けられるだろう。

IPCCとは何か?

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動に関する世界の評価を主導する組織である。地球温暖化問題の認知に伴い、1988年に国連環境プログラム(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって創設された。世界中の気候の専門家が最新の気候科学の研究結果を分析し、IPCCを通じて5〜7年ごとに世界の政治家へと発信している。これまでにIPCCは、1990年、1995年、2001年、そして2007年に包括的な評価報告書を発表している。

このうち2007年の報告書日本語解説)は現時点で気候変動に関する最も包括的なものである。この評価報告書には、130カ国以上の専門家による6年以上にわたる作業が反映されている。450人以上の代表執筆者(*3)が800人以上の貢献執筆者(*4)から情報を集め、さらに2500人以上の専門家が原稿類を査読した。2007年の報告書は3つの部(もしくはワーキンググループ;WG)で構成されている。1つ目(WG1)は地球温暖化の科学的根拠、2つ目(WG2)はその影響、3つめ(WG3)は緩和手段について書かれている。これら3つのWGの結論は2007年に順次発表され、年末には"統合報告書"にまとめられた。

IPCCの評価報告は包括的かつ透明な仕組みにより、専門家と各国政府によって構築・検証・承認される。この仕組みは科学的に信頼性と価値のある情報を、気候政策を決定する人々に伝えるのに役立つ。人間の所業にミスはつきものである。それでも間違いが少なく、見つかった際も訂正されているのは、IPCCの質の証左である。IPCCの仕組みの信頼性を高める共同作業は、今後も欠かせない。

ヒマラヤの氷河が2035年までに全て消滅することはないが、世界の氷河は後退しつつある

IPCCの2007年のWG2の評価報告書には、"ヒマラヤの氷河が2035年までに全て消滅する可能性がとても高い"との記述がある。この記述には裏付けが無く、一部の専門家から査読・編集の過程で公式に疑問が呈されたにもかかわらず、報告書に紛れ込み、その原因も不明である。2010年1月20日、IPCCはこの問題に関して声明を発表した。このPDFには、「この件に関し、IPCCの議長・副議長および共同議長は、せっかくのIPCCの仕組みが機能しなかったことをお詫びする」と記されている。

このヒマラヤの氷河に関する記述は、3000ページにぎっしり詰め込まれた評価報告書全文の一部に入っていた。しかし、良く読まれる政策決定者向け要約には入っていない。どうもWGのメンバーは、”2035年にヒマラヤの氷河が消滅する”との記述に十分な信頼性が無いと評価したらしい。要約ではずっと控えめに、こう表現されている:「現在の速度で温暖化が進行した場合、ヒマラヤの氷河は急速に後退していくだろう」。

IPCCが集めるデータは広汎(*0)であるため、小さな間違いが混入することは驚くことではない。徹底的な査読を経た後で残るその程度の間違いは、報告書全体の結論を左右しない。

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忘れてはならないのは、世界中の氷河が急速に溶けつつあるという事実だ。

世界氷河モニタリングサービスが2005年に世界中の442の氷河について行った調査の結果では、前進している氷河はわずか26、停滞しているのが18、そして398が後退していた。すなわち温暖化に伴い、世界で計測された氷河のうち約90%が縮小している。

地球温暖化に伴う雪氷の変化速度にはまだ不明な点が多い。このためIPCCの2007年の報告書では、氷床や氷河の融解が海面上昇に与える影響の大部分は考慮されていない。海面上昇量の予測では、主に海水の熱膨張が考慮されている。(*5)

より新しい分析結果では、陸上の氷の縮小により、海面上昇量は今世紀末に80cmになる可能性がある。またより可能性は低いものの、2mに達する可能性も指摘されている。

氷河の融解およびそれに伴う海面上昇は、世界中の沿岸地域にとって脅威である。米国の気候変動調査プログラム2009では、米国内における気候変動の影響についてこう結論づけている:「海面上昇と嵐は米国海岸部における浸食・洪水の脅威を増加させる。特に東海岸、メキシコ湾岸(*6)、太平洋の島々、アラスカの一部で顕著である。沿岸部のエネルギーや輸送のインフラ、その他の財産類は悪影響を受ける可能性がとても高い」。

氷河の融解は、同時に飲料水の供給も脅かす。2008年8月のGeophysical Research Letters誌で報告されたヒマラヤのNaimona'nyi氷河に関する調査結果は、こう結論づけている:「この氷河が当該地域において典型的だと仮定すると、山岳氷河の融解水はこれまでの予測よりずっと急速に減少し、約5億人に深刻な影響を及ぼすだろう」。

アマゾンにおける干ばつや火災の脅威に関して引用ミスが見つかったものの、IPCCの結論自体は科学的に正しい。

IPCCの2007年のWG2報告書(影響・適応・脆弱性)の13章の中に、「アマゾンの森林の最大40%が、わずかな降雨の減少によって大幅に変化する可能性がある。これは南アメリカにおいて、熱帯雨林および水循環、気候システムに極めて速い変化を引き起こす可能性がある。現状から別の安定状態へと、ゆっくりとではなく、急速に変化する可能性がある。」との記述がある。

これは別の言い方で言うと、気候変化がアマゾン盆地で干ばつを引き起こす可能性が高まるということだ。干ばつの間、木々は枯れやすくなり、火災に弱くなる。湿潤な時は土壌が十分に湿っているため、火災は森の縁で止まることが多い。

この記述は世界自然保護基金(WWF)と国際自然保護連合(IUCN)−1000以上の政府と非政府組織と160カ国以上の科学者ボランティアから構成される組織−から発行された報告書に基づいている(WWFが単独で出した報告書だという不正確な報道も見られた)。

ここでIPCCはWWF-IUCNの報告書よりも、査読を通った原論文を引用すべきであった。またWWF-IUCNの報告書も内容は科学的に正しいものの、当該論文の引用を正しく表記しなかった。当該論文は、ケープコッドにあるWoods Hole 研究所の上級研究員、Dan Nepstadと彼の同僚達によるものである。

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SkepticalScience.comの編集者John Cookは、このWWFとIUCFの報告書にある引用ミスについてまとめている

"1998年に63万平方キロメートルの森林が酷い干ばつに晒された、というWWFの表記は正しい。この表記はNepstadらの1999年の論文に基づいている。その一方、40%の図は同じ著者の他の論文に載っているが、WWFはそちらの論文を引用するのを怠っていた。同じ著者らによる1994年の論文では、干ばつの間にアマゾンの森林の約半分の土壌から水分が大きく失われたと記されている。また2004年の論文では新たな降雨データにより、アマゾン盆地の半分の森林で土壌の水分量が減り、木々が枯死する水準以下になったり、それに極めて近い量まで下がったりしたと報告されている。これらの論文の結論は、問題とされた記述の内容と整合している:「最大40%のブラジルの森林は、降雨のわずかな減少にも極めて敏感である」。"

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さらに書いておけば、IPCC報告書の当該部分に載せる論文の収集が締め切られた後にも、こうした干ばつと火災の関係をさらに裏付ける調査結果が、Nepstadや他の研究者達から発表されている。

Cookはこう続けている:

"その後の一連の研究により、干ばつに対するアマゾンの森林の脆弱性がさらに明確なものとなった。実地における土壌水分量の計測により、木々の枯死率は干ばつの期間中、劇的に増大することがあきらかになった(Nepstadら、2007年)。さらに2009年には、2005年の干ばつがアマゾンの生物量に与えた影響の調査結果がPhillipsらによって発表された。この干ばつによって大量の樹木が枯死し、生物量が減少した。つまり巨大な炭素吸収源だったこの地域は、炭素の放出源に変化した。論文の結論はこうである:「干ばつはこの地域の炭素のバランスを強烈に変化させ、気候変動を速める可能性がある」。"

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確かにIPCCは、WWFとIUCNによる要約ではなく、査読を通過した原論文を引用すべきであった。それでも、元となる科学的事実は確かなものであった。IPCCが論文をどう引用したかに関係なく、破壊的な伐採の進行と同時に、気候変動が熱帯雨林を干ばつと火災の危険に晒し、その危険性は増大している。

気候変動によって極端な気象現象が増加し、大きな被害をもたらすだろう

多くの査読済論文に基づき、気候変動が豪雨を伴う嵐を増加させているということは科学的に明確に合意が取れている。これは暖かい空気がより多くの水分を含むためで、降雨や降雪の多い地域において、嵐に伴う降水量を増やす要因となる。

2009年の米国の公式報告書「気候変動の米国への影響」(*7)によれば、1958年から2007年までの間にニューイングランド州では豪雨の回数が67%増え、中西部では31%増加した。また米国全体では、20%増加している。

2007年のIPCCの報告書では、気候変動による熱帯性低気圧の変化についても明記している。熱帯性低気圧はさらに強大になり、弱い熱帯性低気圧は減少するだろうと結論づけている。この結論は膨大な数の査読済論文に基づいて導かれ、米国海洋大気局(*8)をはじめとする複数の機関の調査結果によって確認されている。

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こうした極端な気象現象の脅威と気候変動との関連性は、査読済論文において科学的に非常に確かなものとなっている。にもかかわらず一部の懐疑論者(*9)により、こうした関連性が不確実であるかのような誤った印象を抱かせるように、古い議論を引用する例が見られる。この議論は、IPCCの報告書において、極端な気象現象による被害額を算定する段階で見られたものである。懐疑論者達は特にコロラド大の環境学の教授のRoger Pielke Jr.の指摘を引用して、近年の自然災害の増加原因に関するIPCC報告書の記述が間違っていると主張している。Pielkeの指摘は、被害額の増加は主に、沿岸部における人口や富の分布などの経済的要因である、というものである。

IPCCはその事実を否定せず、Pielkeの調査結果も目立つ形で引用している。経済的な要因以外の要因の影響が大きいとする論文も1つ取り上げているが、こちらは引用に際して多数の注意書きを付けている。このようにバランス良く文献を取り上げるのがIPCCの役割である。さらにIPCC報告書は、政策決定者向け要約の中でこう明記している:「気候変動が居住(都市や街)・工業・社会などに与えるコストや利益は、地域や規模によって大きく異なる。しかしながら気候変動が顕著になるにつれ、全体的には負の影響が増加しやすくなるだろう」。またこうも記している:「極端な気象現象がより強大になったり頻繁になったりする地域では、これらによる経済的・社会的なコストが増大し、影響を最も直接的に受ける地域では極端に増えるだろう。」

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Pielkeは、自然災害による経済的影響の記述に関して、未公表の文献を含めることに反対したのである。しかしこのようなことは異常ではない。IPCCの手順にはこう記されている:「…IPCC報告書に関係する資料、特に民間レベルでの緩和や適応に関する手法や経験に関する情報は、未公表や未査読の資料が多いことが明らかになりつつある(例えば、産業誌、組織内部の出版物、研究組織における査読なしの論文や報告書、ワークショップの紀要等)」。IPCCはそうした研究結果の採用に当たってガイドラインを設けており、明確な引用表示も求めている。しかしいずれにせよ、気候変動による経済的コストについてはより多くの公表文献が必要とされている。

中国の気温の記録には信頼性があり、地球温暖化と整合している

温暖化懐疑論者は、1990年のNatureの論文が都市のヒートアイランド現象によって信頼性が損なわれているという、誤った主張をしている。ヒートアイランド現象とは、建造物やアスファルトが郊外よりも色が濃く、都市や人口密集地を暑くする原因になっていることを指す。科学者は1800年代半ばよりこの現象を研究しており、科学的文献でも頻繁に引用される。しかし気候科学により、こうしたヒートアイランド現象は地球全体の温暖化傾向とは関連性が見られず、気温の記録をより正確にするための各種の補正に比べてその影響量が小さいとの結論が示されている。

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科学者達が地球温暖化を分析するときは、年と共に気温がどう変化したかを調査する。たとえば都市にある測定点は郊外にある測定点よりも暖かい気温を示すだろうが、地球温暖化は両方の測定点の気温を上昇させるだろう。全体的な傾向を見るために、科学者は測定点同士の気温の差を、昔のそれと比較している。

米国の機関を含む世界中の科学者により、測定点の場所の変化、高度の違い、毎日の測定時間の違い、緯度の違い、そして測定機器の変遷などを考慮して、測定値は常に補正されている。そのような補正により、例えば米国内の測定点においては、それぞれの地域における都市部と郊外の違いを検出できないほど小さく出来る

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温暖化懐疑論者達は中国東部の気温データを用いて、昨年11月にイーストアングリア大(UEA)から盗まれたメールの内容と結びつけた形で、IPCCの報告書の引用文献に関する議論をでっち上げようとしている。

UEAは声明の中でこうした主張に反論すると共に、ガーディアン紙による情報の扱いに対する指摘(*11)の一部にも回答している。UCSの見方では、UEAはより透明な対応ができたと思われる。特にこうした攻撃に関係する資料を、簡単にオンラインで閲覧可能にするべきであっただろう。

IPCCの当該報告書は確かに中国東部のデータに関する文献類を引用している − 他の数千にも及ぶ資料と共に。盗まれたメールの幾つかは、この中国のデータに言及していた。しかし以前にもでっち上げられた数々の議論と同様、これらの攻撃は科学を殆ど無視している。

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実際には、ガーディアンの記事や他のニュースで(都市化のせいで顕著に上昇していると(*12))槍玉に挙げられた中国東部のデータには信頼性があり、また温暖化を示す世界中の膨大な数の測定データの中では取るに足らないほどの数である。さらに記しておけば、都市化によるヒートアイランド現象は、郊外や海上の膨大な数の測定点での気温まで影響しない。

中国東部は、地球全体の温暖化と整合するペースで温暖化が進んでいる。UEAが指摘した通り、攻撃対象にされた1990年のNatureの論文は、他の数々の研究によってより強固に裏付けられている。

UEA・気候研究部門(*13)長のPhil Jones達が1990年の論文をまとめた時、彼らは東部中国の都市部と郊外部の測定データの違いが小さいことを発見した。2008年の東部中国の728箇所のデータを調べた結果でも都市部と郊外部の差ははっきりしないことが確かめられた。しかし同時に、東部中国の陸上の測定データ全てと近隣の海上の測定データの比較から、陸上では都市化による顕著な温暖化が見られていることがわかった−1951年から2004年までに、平均で10年あたり0.1℃の上昇を起こしていた(訳注:この期間中に約0.5℃)。同時に当該期間中に中国東部は、地球温暖化による影響でさらに0.8℃気温が上昇している(*14)。中国の気温の記録には信頼性があり、地球温暖化と整合している。

訳者注&補足:

(*0)…sprawling(広大な、google言語ツールによる)と表現されている。IPCCの評価報告書は玉石混交の様々なデータを包括的に集め、それぞれ信頼性を評価してから結論を出している。

(*1)…backgrounder(非公式な)。「IPCC公式ではない」ということ。

(*2)…原文ママ。より正確にはIPCCの報告書(AR4)に従って「95%以上の確率で人類が原因である」と記すところだが、残りの"5%以下"に賭けたい人以外にはこの訳で良いであろう。

(*3)…lead author。

(*4)…contributing author。

(*5)…要するに本件のヒマラヤの氷河の後退速度の見誤りは、2007年の報告書の海面上昇量の予測にあまり影響しない。

(*6)…Gulf Coasts

(*7)…Global Climate Change Impacts in the United States

(*8)…National Oceanic and Atmospheric Administration

(*9)…contrarian(人と反対の行動をとる人)

(*10)…information concerns

(*11)…manufactured

(*12)…カッコ内は訳者による補足。

(*13)…Climatic Research Unit

(*14)…原文の書き方がわかりづらいので、参照文献に当たって確認した。1951〜2004年までの中国東部の気温上昇量は都市化により0.5℃、地球温暖化により0.8℃である。

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更新履歴:

2010.2.14 初版公開

2010.2.14〜18 誤訳、typo等修正

2010.2.19 UCSへの謝辞追加

2010.2.20 一部リンクミス修正

2010.5.2 NOAAの日本語訳名修正

個人的コメント

・結論から言って、ここで反論されている懐疑論はいずれも無視して良い。IPCCの報告書は、伊達に何千人もの専門家が何年も(その前から含めれば20年以上も)かけてまとめたわけではない。

・問題の懐疑論者達の主張は、僅かなミスを誇大宣伝したり、実際には正しいことを誤りに見せかけようとしたりしている。この懐疑論者達は人間として恥知らずだと思う。その尻馬に乗って攻撃している一部メディアの記者も、また同罪だろう。

・どんな名医でもミスはするし、なるべく減らさなければいけない。だが少数のミスを強調して名医をヤブ呼ばわりするのは、情報の評価手法として誤っている。

・日本の現在の意志決定システムは、まず情報収集と評価が弱い。耳に痛い情報でも先入観なく評価できなければ、適切な対応も取り難いだろう。

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↑つっけんどんな書き方で申し訳ない。でもこれを見て驚かれた人は、たぶん下記も見られると良いだろうと思う。

STOP THE 温暖化 2008(環境省による解説パンフレット)

ココが知りたい温暖化(国立環境研究所によるQ&A集)

地球温暖化懐疑論批判(日本の専門家達によるツッコミ)

・国立環境研究所の江守博士による関連コラム:[1] [2] [3]

An illustrated guide to the latest climate science…IPCC AR4後の最新のデータがずらり。事態はさらに進行している。


2010-02-16 (Tue)

究極目標

太陽光発電をシステム込みでも$1/Wp以下にするには?(GTM)。太陽電池は普及と共に安くなっている。しかし究極的な目標である「システム全体の価格で」$1/Wp(発電コストにして5-7円/kWh以下、つまり現在の火力よりもさらに安いコスト)を実現するには革新的技術の開発が必要なはず。…GTMはわりと中立的な記事を書くので普段安心して読めるんだが、これはその中でも超ぶっちゃけた調子で楽しいコラム。立場問わず一読の価値あり。

メモ

三菱京セラ、相次いで性能記録更新。…頑張っている。後から出てきたヒヨっ子どもには負けん、というか。

おのれ

CIGSの有力な研究者の方に、某K国がしつこくアタックかけてるらしい。冗談じゃねぇ。盗んでマネするだけで、自分たちで工夫を加えないところになんか技術やれるもんか。

俺の知る限り、中国の方が対価払って自分たちでも努力して工夫を加えてくるので、ずっとマシだ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

dai [競争がヒートアップしているんですね。こんなニュースもありました。<http://japanese.donga.com..]

さくらぃ [ドイツは日本と同じぐらい昔から研究してきたし(投入した公的研究費も日本の倍ぐらい)、アメリカもなんだかんだ言って開発..]


2010-02-23 (Tue)

排出量削減の件

・経済界、議論を透明にしてくれとの要望提出

…はええんやけど、具体的に減らすシナリオがろくに出てこないのは頭が痛いなぁ。

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対応する産業それぞれが、世界市場の伸びに沿って発達していくような(できれば、少し引っ張るような)仮定を置けば、大雑把な道筋ぐらいは立てられるんじゃないかと思う。

もちろん、それで影響を受ける産業もあるはず。でもその影響をどうやって乗り切っていくのか、という所まで突っ込んで考えないとアカンはず。激変緩和措置、海外市場開拓、新産業開拓、などなど。

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ところが日本で今までに取り沙汰されたモデル(例の家計の負担云々で使われたもの)って、基本的に今の産業構造が変わらない(たとえば鉄鋼の国内生産量がずーっとそのまんま、等々)という縛りで計算しているので、そこまで議論できないんちゃうか。

それは今更ジタバタしてもどうしようもなくて、「エイヤ」と動き始めるしかない状況に思える。

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排出量削減(というか産業構造変革とかエネルギー安全保障の確保とか)は、もう不可避だろう。進まなければ、ジリ貧になるだけだろう。

色々面倒だったり大変だったり、トラブルのネタは幾らでも思いつく状況だ。でもここで前進した分だけ、そのあとの苦労が減り、チャンスも生まれると思う。

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やることは極めて地道で単純。だけど大変。人を育て、技術を育て、産業を育て、投資を呼び込む。十分な実効性のある技術を、効率よく普及させる。そういう努力こそが、日本の基礎を創ってきたんじゃないのか。

それすら忘れたのか、日本よ。

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なんつーか、せめて5年前、いや3年前でもいいから、早めに動いてくれてればなぁ。ホンマ大変やで、これ。

判断基準

ぶっちゃけ、「炭素税なんてヤダ」と文句言ってるだけのうちはダメかと。それをどう使うのが良いのか、ってとこまで議論しないと。


Written by "バカ殿"さくらぃ
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