壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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2010-05-13 (Thu)

質問に回答

えーと全量買い取りの太陽光への適用について。

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公共・産業用:

基本的に余剰電力が少ない(発電量の1割とかそんなん)ので、この用途で普及を進めて量を稼ぐなら、やっぱり全量買い取りが必須。基本的に話は単純かと。

環境価値の分配方法とか補助金・税控除などとの組み合わせ方には、工夫の余地あり。

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家庭用:

一長一短でややこしい。(ぉ

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・既存の設備について:

既存の設備まで全部を全量買い取りに変更してしまうと、膨大な数の工事と手続きが必要になります。国全体で見ると、無駄が多くなると懸念されます。

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・新規導入分について:

・設備容量が小さい家庭や昼間に人が居る家庭では、余剰より全量が有利になることが多い。そういうケースに該当する設置者に取っては嬉しいので、制度次第で設置件数は伸びが期待できる。また小規模設備用のパワコンのコスト低減や、施工技術の向上等が期待できる。

・その一方で小規模な設備が増えると、工事費やパワコンなどの費用の比率が増えるので、発電コストが高めになると思われる。もう少し流通費や工事費が下がってからの方が、たぶん国全体では嬉しい。

・節電意識は、余剰買い取りの方が強くなる。

・全量買い取りだと余剰買い取りに比べ、将来電気代が上がったときは損をした気分になる(下がれば得だが…下がるかなぁ?)。

・全量買い取りだと余剰買い取りに比べ、環境価値を電力会社が買い取る割合も増やしやすい。地元自治体や設置者が利用したいケースには配慮が欲しいかも?

・全量は余剰に比して買い取る割合が増えるので、買い取り単価は下げることになる。最終的な助成水準としてはどちらも同じにできるが、単価の違いから印象は悪くなる可能性あり。

・全量にせよ余剰にせよ、最初の買い取り期間(10年)が終了後は余剰買い取りになるだろうと思われる。

・日本では長年余剰買い取りが使われてきて、馴染みがある。最近制度の変更が相次いだので、追加するにしてももうちょっと待った方が無難かも。

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とまぁ色々あるので、家庭用では一概にどちらが良いとも言い難いです。ケースバイケース。

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個人的意見では、下記のようなシナリオを推奨します。

・公共・産業用は全量買い取りを導入。環境価値はある程度、地元自治体や設置者も利用できるような工夫をお勧め。

・家庭用は、当面は余剰買い取りを基本とする。

・将来もっとパワコンなどの値段が下がったり(or もっと攻撃的に下げたくなったり)するなどして、家庭用でも比較的小規模なケースの件数をもっと増やしたくなったら、家庭用にも全量買い取りを新設時の選択肢として追加提供。

・全量を追加する場合でも、既存設備まで全部変えるようなことはしない。

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家庭用でも全量買い取りの導入を希望される方が多いのは承知してるんですが、追加するにしてももう2,3年待って頂いた方がええかな、というのが率直な印象です。

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要は目標とする普及・投資ペースが確保できてればええんですけど、どういう市場セグメントを伸ばして、それによって特にどういう技術や産業を伸ばしたいか、という所も念頭に置いて頂いた方がええかと。太陽電池そのものだけじゃなくて、電力制御とか建物への組み込みとか、そういう分野での技術開発・コスト低減・産業育成も絡む話になりますね。

それで最終的に「助成資金あたりの、国全体で(色んな面で)得られる利益を最大化する」のが目的になります。

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ややまとまりがなくて恐縮ですが、検討のご参考になれば幸いです。


2010-05-24 (Mon)

ツッコミ

昨日の日経(紙媒体)にあった、エネ研のコラムへのツッコミどころ一覧。裏でこそこそ流してるのは聞いてたけど、表に出てきたのね。

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・再生可能エネルギーのコストは全体に低減が予測されている。太陽光は現在でこそ高いが、値段は確実に低減傾向であり既にグリッドパリティに達し始めている。現在の技術を素直に発展させるだけで、10年未満で原油火力発電より安くなるペースである(それも、革新的な技術開発を考慮せずに)。エネ研の主張ではその可能性を無視して議論しており、非合理的である。

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・2008年などは化石燃料の高騰で標準家庭の負担は月500円以上増え、また低所得者層への配慮も無かった。しかも化石燃料は今後10年程度で2008年の水準が恒常的に続くようになると見られている(例:ここのFigure29や、IEAのWEO等)。その見通しに従うならば、このまま何も対策をとらなければ、500円を超えるような負担がずっと続くことになる。恒常的な負担を無視する一方で、対策への一時的な負担だけを強調するのは非合理的である。

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・国産の再生可能エネルギーに月500円支払うのと、輸入の化石燃料につき500円支払うのでは、国の経済への影響が全く異なる。設備等が国産の再生可能エネルギーならば、そのコストの何割もが国内に還流し、国内経済に資する。たとえば太陽光の場合、市価の半分が営業・流通・工事費と見られているため、主流品ならばおそらく5〜7割ぐらいが国内に還流するだろう。その上化石燃料と異なり、輸出もしている

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・このエネ研のコラムでは言及されていない(意図的に避けている?)が、化石燃料は一度輸入して燃やしてしまえば、それっきりである。また大金を支払って輸入しなければならない。太陽光発電の設備はその殆どがリサイクルでき、一度輸入した原料は繰り返し使える。さらに、輸出も出来る。想定比較期間が長くなるほど太陽光発電が有利になるが、エネ研のこのコラムではその特徴を無視して化石燃料に有利な範囲(せいぜい数年?)だけで議論している。

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・エネルギー価格が上がることの悪影響は許容範囲に抑えなければいけないが、それで問題が起きても対策可能なことは複数の国の実績で示されている。たとえば補助金などを組み合わせることで、低減は可能である。その一方で、化石燃料は今後それ以上に高騰すると見られている(上述)。エネ研は比較的小さい解決可能なリスクだけを強調する一方で、より大きくかつ解決困難なリスクを無視して議論しており、非合理的である。

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・低所得者層への配慮は、様々な形で可能である。

> 低所得者層の住宅の屋根を借り上げ、公的機関やNGOが発電所を設置する

> 使用電力量の少ない家庭は負担を減らす

> 補助金を併用する

> 市民発電所に出来る範囲で出資し、売電収入を得る

いずれも世界で実績のある方法である。低所得者層への影響を本当に心配するならば、これらの対策を検討しないのは非合理的である。

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・既述のように、助成を用いてでもエネルギーの変革を進めなければ、化石燃料の高騰の影響が勝ると予想される。エネ研のような論理ではいたずらに日本の産業の変革を妨げ、エネルギーの国内価格の高騰を許し、結局は低所得者層への影響をより大きくするだろう。

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・太陽電池の場合、ある程度需給バランスの影響は受けても、基本的に価格は低減している。以前に発表された彼らの”20年後まで全く下がらない”などのシナリオは、既に事実に反している。また新技術の開発・実用化が続いている状況からみても、”値下がりしない”というのは非現実的な想定である。

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・太陽電池が削減コストが比較的高い…現時点ではその通りであるが、太陽電池は比較的高価値な昼間の発電に特化し、価格低減も見込まれる電源である。「他の電源を昼間だけ動かした場合」と比較し、「今後の各エネルギー源の価格変化」を考慮した場合、太陽電池を併用した方が安くなると考えるのがもっとも自然である。24時間ずっと一定量を発電する用途ならば他の電源の方が安いが、昼間の需要増・化石燃料の消費量増大に対応するには、太陽電池を使った方が安くなるだろう。エネ研の主張はこうした特徴を無視して議論しており、非合理的である。

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・国による制御にはリスクもある…その通り。だが、それはエネ研が主張する炭素税や排出量取引にも共通する課題である。

すべての政策には長所と欠点があるが、エネ研の主張はその両方を指摘せず、自分たちが推す方式では長所だけを取り上げ、他の短所だけを批判しており、非合理的である。

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・海外企業に負けるリスクもある…これもその通り。だがもしもそうなった場合、どのみち次善の策として、海外メーカーに国内で生産させる必要があるだろう。太陽光発電は昼間の高価値な電力に特化しているから、貿易収支への影響が大きい。初期の助成をけちったばかりに、風力発電のように大部分を輸入に頼る状況を招くのは、経済面でも安全保障面でも最悪だろう。

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・炭素税や排出量取引の利用…併用は自分も歓迎する(というか、以前から薦めている)が、これらにも欠点はあり、万能ではない。代わりに他の方式を止めよという主張は、詭弁である。

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一口に助成と言っても、お金を何も考えずにかける訳ではない。今まで何十カ国もの国で試されてきた様々な方式の中でも、固定価格買い取り制度が太陽光発電で最も効率よく実績を上げている助成制度なのは、今はIEAですら認めている事実だ。エネ研の主張は、かつてのIEAの詭弁の蒸し返しだ。

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・"市場をひずませるからやめろ"という主張をしているが、それならば化石燃料の安定供給に支払っているコスト(備蓄、確保のための政治的コスト、燃料費調整、戦争?)も否定することになる。原発の地元対策や燃料確保に支払うコストも否定することになる。さらにエネ研が推す炭素税や排出量取引とて、"市場をひずませる"と言える。そのような論理で、再生可能エネルギーへの助成だけを批判するのは非合理的である。

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すべてのエネルギー源は、助成と無縁ではない。詰まるところ、国の安全保障が絡むからだ。なのにエネ研のような論理で人の足を引っ張るのは、私たちが普段からエネルギー源の確保に費やしているコストを無視し、問題を単に先送りし、状況を悪化させるだけだろう。

このエネ研の主張は、詭弁である。

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まぁそれでも、以前よりはマシになったみたいやけどね。(^_^;

太陽光発電のニュースソース

僕は下記をよく見てます。

Renewable Energy World

PV-tech

GreenTechMedia

Photon

価格情報はSolarbuzz

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あと公的な統計やレビューなら、IEA PVPSとか。ちょっと発表時期が遅いし時々欠けるけど、無料。

ぼそっ

一部の方々には、耳の痛い話かも知れないけど…。

既存のエネルギーインフラも、人・物・金をもっと変革を促す方向に振り向けるようにしないと、国全体でジリ貧になるんじゃないですか。新技術への投資を呼び込んで雇用を維持するか、ジリ貧でそのうち破綻して大量解雇か、どちらを選ぶかは自由っちゃ自由かも知れないけど…変革を拒んでいる間に人材を引き抜かれ、最後にインフラ丸ごと外資にくれてやるような結末は避けて欲しいです。

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GMや日航の破綻に、共通している点がない?

メモ

最近の市況に関するGTMの分析。ポリシリコンの値段はスペインの暴走による高騰を経て下がり、モジュールの価格低減に貢献している。それに併せて、各国ともタリフを引き下げる傾向にある。ドイツ市場が過熱気味だが、これもタリフ引き下げで収束するだろう。需要は今までのように特定の国に集中する形から、様々な国や地域に拡がる形に変わっていくだろう。

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数年前に企業の生産能力が極めて限られていた頃は、(今からすれば)過剰なほどのタリフを用意しないと、なかなか大きな工場を建ててもらえなかった。でも今はタリフは最低限で良くなり(=売り手市場→買い手市場になってきた)、企業にとっては淘汰の時期になったということだ。

FirstSolarの登場や新興国の台頭でやや早くはなったが、これは以前から関係者間で予想されていたことだ。例えばドイツ銀行が一時的な過剰供給(oversupply)と淘汰期の到来を予想している(時々更新されているが、少なくとも2008年の時点からこの資料で言及している)

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そういう競争を乗り越える覚悟が無ければ、そもそも助成を論じる資格は無いだろう。コールタールに足を取られていても、陰から他人を引っ張り込むことしか考えつかないような方は、一人で勝手に沈んで頂きたい。

本日のツッコミ(全13件) [ツッコミを入れる]

FIRST [やり玉に挙がっているエネ研とやらの主張へのポインタも 示してくださいよう〜。]

dai [投資する余力のある人たちのお金(民間資金とも言う)がどういう分野に回るかを議論しているときに「貧乏人は投資できない、..]

さくらぃ [ポインタ追記しました…紙媒体のコラムですわ。IEAの見解にすら事実上反していて、いまさらまともな論文で出せるような内..]

さくらぃ [「お金を投資して利益を得る」行為は今の経済のしくみそのものなんですよね。銀行にお金を預けて利子を得たり、他の発電所に..]

さくらぃ [まぁ長々と書いたけど、このスライドの2枚目だけで大体片付く気がします。ジタバタしても、安くなってきてる事実は変わらな..]

Taro [環境省小沢試案(4月1日)と経済産業省の次世代送配電ネットワーク研究会報告(3月23日、4月26日)による系統安定化..]

さくらぃ [それらの見積もりはworst caseと理解しています。実際には送電網への投資は設備更新に伴って行われ、「純粋なスマ..]

さくらぃ [FITによる助成額削減は下記のような太陽光発電の価格低減に伴うもので、自然な動きと理解しています。金融危機よりもFi..]

さくらぃ [国内の太陽光発電関連産業の規模は昨年で8000億円ぐらいになり、また生産した太陽電池はここ暫く6〜8割程度を輸出して..]

さくらぃ [お答えしたところで、こちらからも要望を。次に書き込まれるときは、メール等で私に正体をお明かし下さい。ここはそういう方..]

さくらぃ [重ねて書きますが、「利用上の注意」にもあるとおり、学術的議論ならば、例外なくご身分の開示をお願いしております。 恥を..]

FIRST [本筋ではないですが、「昨日の日経(紙媒体)」だけだと この業界では物理日付なのか論理日付なのか、とか問題に なります..]

さくらぃ [ありゃすんません、夜中過ぎに書いたもんで混乱が。5/24付の朝刊でした。]


Written by "バカ殿"さくらぃ
 [利用上の注意]