2010-09-17 (Fri)
☆ 昨日の東洋経済の石井吉徳氏のコラム
やれやれ。
"EPR=0.98"の出典はおそらく、"もったいない学会"なるNPO団体の天野治氏。主なツッコミどころは下記の通り。
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・同じ"EPR(エネルギー収支比)"や"EPT(エネルギーペイバックタイム)"といっても、化石燃料と再生可能エネルギーでは定義がそもそも異なる。
枯渇性エネルギーの方は運転時に燃やす燃料が無視されており、実際のEPRは1.0より低くなる。たとえば効率35%の火力発電なら、EPRは0.35未満になる。再生可能エネルギーは化石燃料の代わりに太陽光・地熱・風力等を吸収して発電するので、実際はずっと高性能になる。
・氏の主張する"EPR=0.98"でも、再生可能エネルギーの場合は"投入した燃料の98%に相当する電力を得られる"という意味になる。効率が30〜40%程度の石油火力発電の方が優れていると主張するのは、自己矛盾している。
・最近の分析結果では、運転用燃料の消費を無視した比較においてすら、太陽光発電のEPRの値は石油火力発電にむしろ勝る。
上記のいずれか一つだけで、氏の主張は却下できる。
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その他のツッコミどころ。
・「鏡」って何ですか。太陽光発電は普通、集光式でも鏡なんて使わない(太陽熱と間違えてる?)。そもそも実物をロクに知らないんじゃないのか、この人。
・計算の根拠が明確に示されていない。まともな論文誌で認められてもいない(俺の知る限り)。
・この人の他の書き物を読めばわかるが、より新しい計算結果があることを認識しているのに、それらよりも自分の計算結果の方が信頼できるという確実な根拠を示していない。根拠無く主張するのは、科学者として不誠実。
・”発電所に届いた段階での(燃やして発電する前の)石油のEPRが100である”と自慢されているが、そのような基準で論ずるならば”太陽電池(発電所)に届いた段階での太陽光エネルギーのEPRは無限大”になるはず。だがこの記事では、片方だけ発電後の段階の値を持ち出して比べている。これは、詭弁。
・石油の有限性をことさら強調している人が、EPRの計算において運転用燃料を無視し、あたかも石油が無料・無尽蔵であるかのような比較を行うのは自己矛盾。
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・出所と思われる天野氏は「熱より電力の方が価値が高い」と自分で言いながら、計算上は等価に扱っている。
・数値からは、1991年の電力中央研究所報告Y90015の数値(EPR=2)を改変しているのではないかと思われる。しかし、そもそもこの報告書は設定条件が現実に即していない。実際その後、同じ著者によって1995年に見直されている(同、Y94009;EPR=5〜9)。にもかかわらず、天野氏は根拠を示さずに古い方のデータを用いている。これは少なくとも15年前から不適切な行為だと言える。
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一言で言えば、この石井氏(&天野氏)の主張内容はニセ科学(科学を装いながら、実際は科学的に虚偽の主張)です。以上。
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まぁ、石井先生は騙されておられるだけかも知れないけど。
☆ ぼそっ
結局は同じ船で、同じ嵐に揉まれているというのに。
☆ メモ
市場関連の資料。
・どの種類の太陽電池もコスト低減が見込まれる。今後の数年でグリッドパリティが達成される国や地域が増えてくる。
・国内の関連産業規模は、2009年度は約8千億円。2010年度は1兆円近くに達する見込み。
・電気自動車にも使えるような蓄電池の価格も、現在400$/kWhへと急速に安くなっている。この値段で仮に4000回ほど使えるならば、家庭に置いても金銭的に元が取れる水準になる。
Written by "バカ殿"さくらぃ
[利用上の注意]
・ koyama41 [「新エネルギーが期待されるのですが、石油を代替できるエネルギーはない、というのが私の考えです」 この一文だけですでに..]
・ さくらぃ [イージーオイルが無くなると言いながら、石油の性能(それも一般的な報告にのってるより異常に高い数字)を強調したりしてる..]
・ さくらぃ [「もったいない学会」は慌てて「EPR部会」へのリンクを消したようだけど、本体はまだ残ってるね。]
・ koyama41 [とりあえず、記事の主張とさくらい氏の主張を並べると、 「(条件の良い油田で)石油を100掘るのに必要な石油は1だけだ..]
・ さくらぃ [そうです。一方の太陽光発電だと、現状でも101投入すると360以上のエネルギーが(しかも電力として)得られる。 _ ..]
・ さくらぃ [というか図にも書いたけど、本来EPTやEPRで比べること自体が馬鹿らしい。ケンカ売られたから、あえてそっちの土俵に乗..]