2011-03-10 (Thu)
☆ コスト比較
質問にご回答。
・2020年に予想される原油(生炊き)火力発電のコスト:
2020年の原油価格は、たとえば米国エネルギー省は110ドル/バレルぐらいと予想しています(29ページ)。
(化石燃料の値段は予測が難しいことで悪名高いので、ひょっとしたら50$/バレルぐらいに安くなる可能性もあるかも知れない。でも逆に150ドルを超えたりするかも知れない(P.29)。110ドルというのは、中間的な予測値です。)
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その他の条件については、
・1ドル=85円、1ユーロ=115円、排出権価格15EUR/t-CO2、
・原油生炊きの火力発電の受電端発電効率34%(発電端で38%;日本の実績に基づく数値だけど、最新型だともう少し効率良いかも)
とおくと、原油生炊き火力発電の(燃料費+排出コスト)は約18円/kWhになります。1ドル=100円に戻ったりすると、20円/kWhを超えます。
これが火力発電で最も高い部類(最新の天然ガス式などだとこの4割とかになる)。だけど、まだ使われてます。
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・現在の太陽光発電による発電コスト:
無料で見られるデータだと、solarbuzzに米国での例が載ってます。
バッテリー付きの小型システム(residential)だとまだ高いけど、普通の系統連系したシステムだと、条件の良い所では現時点でも16セント/kWhとか20セント/kWhとかになってます。
つまり、2020年に予想される石油火力のコストより安い場合が、既に出てきてる。
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・今後の太陽光発電の発電コストの見通し:
調査会社の領分になる(たいてい有料だ)けれど、無料で見られる情報はこちらにまとめてます。
石油と違って、たくさん造るほど安くなる。累計生産量が2倍になるごとに、だいたい2割づつ下がってます。(少なくとも、”下がらない”という想定は非現実的です。)
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というわけで、条件の良い国では数年のうちに(一部では既に)石油火力よりも発電コストで安くなってくると見られます。実際、米国では3~5年程度と予想されてます。
日本は米国の"Sunny"よりは条件が悪い(たぶんコスト3~7割増しとかそんな感じ)けど、それでも市場規模が4倍とか8倍になる頃には似た状況になると予想されます。市場拡大のペースからすると、10年かからないはずです。
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結局、一番有りそうな予想に従って計算すると、太陽光も使った方が安く上がるだろうと見積もられます。今は確かに高いけれど、その分将来の電気代の値上がりを抑えられると思われます。市場規模も、世界的に拡大が続くと見られています(予測の一例)。
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んで現状、国内で生産した太陽電池の6割とか7割を輸出してます。
関連産業の規模は2010年時点で約1兆円の見込みです。雇用にすると5~10万人ぐらいでしょうか。今後の拡大も期待されてます。
もちろん、環境保護にも役立ちます。
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要するに、今頑張って育てることで、将来その分安心して電気を使えるようになると思われます。また、経済(雇用・景気)や環境にも好影響が期待できます。
☆ たとえ話
ちなみに夏のお昼頃ですと、1平方メートルあたり1kWぐらいの太陽光のエネルギーが降ってきます。タテもヨコも1メートル毎に、1000Wのヒーターを並べて動かしてるようなもんですね。そりゃ、暑いわけで。
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その太陽の光って、どこかで掘り出してタンカーでえっちらおっちら運んで工場でふにふに精製して…なんてやらなくても、勝手に空から降ってくるんですよね。しかも無料で。
太陽電池ってのは、そのせっかくのエネルギーを電力にしちゃえ、という技術なんですわ。多少使い勝手が悪くても、「持続的で勝手に空から降ってくるエネルギーが使える」というところが、結局は最大の魅力だと言えます。
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そんな技術を活用されるかどうかは、皆様次第。でも5年、10年、20年先の電力(や経済、環境)を心配されるなら、導入をお勧めします。:)
☆ しかしほんとは
太陽光だけじゃなくて、風力とかバイオマスとか小水力とか地熱も、もっと活用した方がお得で、環境にもよろしいはずなんですよねぇ。
Written by "バカ殿"さくらぃ
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