2011-03-16 (Wed)
☆ 問題メモ
原発事故に関して、個人的に知りたいと思った(=知識が足りなかった)点のメモ。適宜更新。
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事前の対策について:
・津波への対策:防潮堤の高さ、浸水対策の経緯(参考記事)(参考記事2)(参考記事3)(参考記事4)
・炉内で発生した水素の漏出への対策、建屋内での水素爆発への対策(参考記事)(参考記事2)
・核燃料プールに関する非常時の対策状況
・漏洩時の対応手順の準備:ハザードマップ、避難基準、避難手順、指揮命令系統、正しい影響や対応手順の周知(デマ防止)、考え得る最悪の事態についての周知
・非常時の冷却機材・人員の確保不足?
・設計上は耐えるはずの圧力で圧力抑制室等が破損した?→経年劣化の過小評価や耐震性の過大評価等?(参考記事)
・非常時の炉内状況のモニタリングや遠隔操作、ロボット対応の設計?
・原子炉同士を近接させない?もしくは周囲の非常時の除染策の確保?
・モニタリングポストの電源確保
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対応について:
・最初から廃炉を決断すべきであった可能性?(参考記事)早期に海水注入を決断できていれば、炉心溶融は防げた?(参考記事2)
・初動時の人員・対応体制の不足?
・水素爆発の予見と予防、被害の抑制(ポンプ車が破損して不足)
・核燃料貯蔵プールの温度上昇・火災の予見、鎮火の確認、再発の防止
・拡散状況の公開、国民への精神的ケア(パニック防止)(参考記事)(参考記事2)
・最初からあらゆるオプションをテーブルに載せて、同時並行的に進められなかったか?(仮設送電線の設置等、最初から進めなかったのはなぜか)
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さらにあり得たかもしれないこと:
・地震の揺れで、最初に制御棒が入っていなかったら?(地震の規模は設計時の想定を越えていた?)
・核燃料プールの底が抜けていたら?(参考記事)
・ボランティアによるパニック防止の努力がなかったら?
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さらに知りたいこと:
・そもそも、日本のどれだけの原発で、同じことが起こり得るのか?
・最新式のものでは、上記のうちどれだけ対策が出来ているのか。出来ていないものの割合、度合いは?
・上記のような事柄への対策を徹底した場合、実際にはどれほどのコストになるのか?
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☆ 今後必要になるだろうこと:
・上記のような事柄の調査と公表
・被害額の算定(風評被害や株価暴落等の影響含む)(参考記事1、参考記事2、参考記事3)
・今回の件を踏まえた既存炉の安全性の再調査(ストレステスト)、改修や対応体制強化
・実質的な発電コストの再算定
・国民的感情と代替エネルギーコストのバランス変化の調査、およびそれに沿った各種エネルギーロードマップの修正
☆ 個人的印象
正直、甘く見てました。少なくとも、発生当初に僕が予期したよりも遙かに危ない段階まで事態が進行してて、しかもその状態が長期間解消されそうにありません。
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(僕が門外漢なりに勉強した範囲では)最新のものに比べると、今回の古い炉は技術的に安全策が少なく、またそれを補う改修や危機管理体制も足りてなかった、というのが率直な印象です(こういう古い炉はどれぐらいあるのだろう?)。
つまりその分、コスト(リスク)が低く見積もられていただろうと感じています。
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一例:「1000年に一度」の事象と言っても、40年間使うならば、その間の発生確率は4%。仮に発生した時の想定被害額が10兆円なら、4000億円までは対策費にかける価値があった、ということに。その分コストは上がるけど、それだけ対策にお金をかけていれば…?
そういう検討と対策が、足りていたと言えるかどうか。問題は技術的なところよりも、人的なところにあったのか。そうだとすれば、今後どうするのが良いのか。
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謎計算:原発は開発から60年で500基余り。ごく大雑把な計算で500x60/2=15000年・基稼働、その間3回(or5基)メルトダウン。1基・年あたり5000分の1(or3000分の1)。稼働年数40年なら125分の1(75分の1)。想定被害額8兆円なら、640億円/基(約1000億円/基)のコスト増に相当。
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僕自身は、再生可能エネルギー(自然エネルギー)を増やすのはもちろんだけど、原子力もそれなりに使っていけば良い、という意見でした。
でも今回の事故で、上記のような疑問点が出てきました。今後、これらの疑問が解消されるのかどうか、それを確かめたいと思っています。
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☆ 何が怖いのか
放射線が怖いと言っても、原爆みたいに一瞬で焼け野原になるわけではない。情報が十分に公開されていれば、基本的に、逃げたり対策をする暇はある(情報公開の透明性や、避難指示が適切だったかどうか、も当然問題になるけれど。後述)。
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怖いのは放射性物質そのものよりも、(避難等によって)生活基盤の破壊や、社会的機能の麻痺がおこること。(参考記事)
今回既に、入院してた人達が治療を受けられずに亡くなられるなどの被害がでている。農産物の風評被害も酷いと聞く。避難している人達も、家にいつ帰れるかわからず、これからどうすれば良いのかが見えない。放射線そのものよりも、そういう二次的な被害の方が大きいし、「怖い」と言える。
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また事故に関する情報公開や、普段からの対策やチェックの徹底などが行われていないと、それも「怖さ」を増す。でもいくら技術が揃っていても、それを使う人間次第で、怖さ(&リスク)は増してしまう。
逆に、既存の情報を技術をきっちり活用して対策していれば、今回のような事態にはなっていないはず。
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「怖さ」については、反対派も推進派も、そういうところに焦点あてて議論しないと、すれ違ったままになるんじゃないかと思う。
☆ ぼそっ
原発みたいな大規模集中型の電源はシステムが複雑で、停止期間や影響範囲が長くなりやすい。
小規模分散型電源をもっとたくさん組み合わせていれば、悪影響を少なくできたはず。色んな面で。
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柏崎が止まる以前から言ってることだけど、集中型と分散型はそれぞれ異なる「安定性」と「不安定性」を持ってる。どちらかだけに頼ると、却ってコストやリスクを増大させる。ちょうど良いのは、中間のどこかのはず。
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せめて10年前から頑張って分散型電源も導入を進めていれば、今回の停電や化石燃料の輸入増加による悪影響を、1割とか2割ぐらい減らせたはず。
☆ かと言って
現時点で既に原発に何割も電力を頼っているのを、すぐに全廃、なんてのも無茶(ドイツですら、そこまで無茶はしてない)。発電所ってのはお金がかかる上に寿命も長いので、数十年先まで見据えて徐々に整備していくしかない。(おまけに化石燃料の高騰や、気候変動問題がある。少なくとも僕は、そちらの方が怖い。)(参考記事)
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数十年先、電力をどうやって供給するのか。
実は日本では、そういう議論は欧州諸国等に比べると10~20年ぐらい遅れていた。とにかく化石燃料の使用量を減らそう、と最近ようやく動き始めたところで、今回の事故はおきた。
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今後どうするのか。
問題があったのはどこで、どう直していくか。どれだけお金と時間をかけて、どんな未来を築いていくか。
今はまだ事態が進行中で、とてもそこまで考える余裕はないかも知れない。でもいつか、それをみんなで改めて考える時が来るはずだ。
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なお、暫く前から、今後エネルギー供給に関しては一つの叩き台が環境省から示されている。データが豊富なので、議論の参考になるだろうと思う。
そろそろ資源量調査の最新版も出るらしい。調査中の事柄もあるし、技術も進歩しているので、今後も更新されていくだろう点にご注意。
Written by "バカ殿"さくらぃ
[利用上の注意]
私は櫻井さんほど冷静、分析的になれないので「原発なんか建てなきゃよかった」の一言で済ませちゃいます。
そういえばこのブログのタイトルが、象徴的ですね。これから東電は「壊れても直せなくなっちゃった日記」を書かなきゃならなくなるかもしれない。笑えない冗談だけど。
いや、私も正直、甘く見てたように思います。
少なくとも私がイメージしていたより、原発が廃れる時期はずいぶん前倒しになるように思います。おそらく、純粋にコストだけで考えても。
無事なようでなにより。避難した?
おー、どもども。夫婦ともに無事です。職場はインフラがダメージ受けてて今週は仕事になりそうにない。自宅待機、ついでにつくばから離れとけ、という命令が出てます。嫁さんは里帰り中。<br>俺はこれから米国出張(予定では11日から(!)だったけど1週間延ばした (^^; )。戻るまでに収まるんだろか…。
(「廃れる」つーても数十年単位の話で考えてたので、念のため)
出張して避難を兼ねるのもいいかも。しかし当分節電は日本につきまとうでしょうなあ。
発電量が足りないのは痛い。そのうえ、化石燃料がアホみたいに高くなってきて、燃料コストがかさむのもつらい。再生可能エネルギーの導入をしっかりやってりゃ、影響を1割でも2割でも減らせたと思うんだけどねぇ。
まぁアメリカは最近ずいぶん力を入れているので、しっかり勉強しますよ。