2011-03-30 (Wed)
☆ 助言
とりいそぎ。適宜更新します。
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どんな発電方式にも得手不得手があり、万能じゃありません。どれかひとつだけに供給が偏ると、どこかで弊害が大きくなっちゃいます。
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たとえば太陽光は昼間だけ発電するんで、昼間、電力需要のピーク(特に夏のエアコン)に対応するにはそれなりに役立ちます。日が当たるところなら屋根でもどこでも置けるので、狭い日本でも、たくさん使えます。その一方、しごく当然ですが、昼夜問わず発電する用途(ベースロード)には向きません。
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昼間のピークは、以前から問題になってました。しかし今回の事故で、原発が担当していた、ベースロードの分までもが問題になってます。節電しても補いきれず、代わりに化石燃料(石炭や天然ガス)を燃やす量が増えてしまい、その影響が懸念されています。(参考記事1:化石燃料高騰)(参考記事2:排出権価格高騰) (参考記事3:化石燃料高騰続報)
そのベースロードを再生可能エネルギー(自然エネルギー)で補うならば、地熱が一番向いてると思います。あと小規模水力、風力、バイオマスなどを組み合わせれば、それなりに量も稼げるはず。(参考資料)
そのための技術も、既に私たちの手の中にあります。
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しかしここで、課題が2つあります。
・送電網の整備
発電所の場所や電力の配り方が変わってくるので、送電網も改造が必要になります。
特に、東北と北海道(特に北海道)に地熱や風力(さらにはバイオマスや小規模水力)資源がたくさんあります(前出資料)。これらを需要地まで送電することが、ポイントになるのでは無いでしょうか。今時の技術ならば1000km送電しても、数%程度の損失で済みます。(参考資料:2000km送電しても損失7%)
逆にこれを整備すれば、地域の自然エネルギー資源全般を活用しやすくなり、被害地域の復興にも寄与するのではないでしょうか。
・国立公園の利用
国立公園を利用する条件次第で、地熱や風力資源の利用できる量が大きく変わってしまいます。特に地熱は現状、国立公園に対する各種の規制が主な制限要因だと言えます。ここを改善すれば、今までとは桁違いの量が利用可能になります(前出資料)。
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上記2点の課題については、今後の化石燃料にかけるコストを抑制する意味でも、お早めの検討をお勧めします。
☆ そのほか
縁の下の力持ちにも、ご留意を。自然エネルギーの送電・配電に欠かせない技術も、きっちり押さえておく必要があります。
・損失が少なく、送電線の数が少なく済み、かつ日本が得意な高圧直流送電技術が要になるかと思います。
・蓄電池、インバータ(特にSiCデバイス)、情報通信を用いた電力制御、等々。
特に人材の確保と、他国への流出防止が重要課題かと。
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☆ トレードオフ
それぞれ、簡単に。
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化石燃料(石油、石炭、天然ガス等):
貯めておけるので、利便性は良いです。また今のところは、まだギリギリ安い値段です(というか、そのぐらいの値段に調整されているんですね。ほぼ全量輸入の日本は、生殺し状態)。
しかし基本的に輸入なので、使えば使うほど、日本からお金がどんどん出て行ってしまいます。2008年には年間の輸入額が20兆円以上になったりしました(そして毎年、全部燃やしています)。2020年には、2008年以上に値上がりするだろうと見られています。また値段が大きく変動するのも、リスクです(ジャンク債みたいなもの)。おまけにCO2や有害物質もたくさん排出します(特に石炭)。温暖化ガスの排出削減のため、排出権が値上がりするリスクも抱えています。
確かに便利ではあるのですが、このまま使い続けていては、将来の電気代、国内経済(景気・雇用)、安全保障、環境、いずれにも悪影響です。
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原子力:
今回事故を起こしたような古い炉ではなく、最新型でより安全な原発を、スリーマイルのように「魚一匹跳ねても報告する」ような監視の仕組みを作って使い続ける選択肢も、残されてはいます。今から建てたりするとなれば長い年月(日本ではこれまで平均十数年)がかかりますし、事故の可能性は皆無ではありませんし、廃棄物の問題もあります。今までよりお金もかかるでしょう。しかし化石燃料を輸入して燃やすよりは、経済的にまだマシになると思われます。CO2排出を減らす効果もあります。
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再生可能エネルギー(自然エネルギー):
自然エネルギー普及には、お金も手間もかかります(量を増やすために、設備を造る工場や、それを据え付ける人を増やす必要があります)。また必要な送電線も発電設備も、環境への影響は皆無というわけではありません。
しかしその代わり、石炭などを輸入して燃やす量を減らせます。全体的には経済(景気や雇用)を改善し、同時に環境保護も進められます(ドイツ の 実例)。今回のような事故や、放射性廃棄物の心配もありません。また化石燃料で今後も値上がりが予測されているのと異なり、自然エネルギーは今後もコストダウンが期待できます(太陽光発電の例)。今すぐとはいかなくても、結局は化石燃料を使い続けるよりも安くなると見られます。何より、持続的に国内で自給できるエネルギーです。
今、お金と手間をかけることで、将来、より安心して電気が使えるようにできます。
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今後何をどれだけ使っていくかの判断は、電気を使う人、一人一人がする必要があります。日本はわりといままでこのへんを「お上」が全部やってきちゃったけど、だんだんそういう時代じゃなくなって来てるように思います。
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なお、何回も出してるけど、現時点で日本最強の資料は間違いなく こちらの 環境省資料 です。ものすごい分量があるので、覚悟の上でどうぞ。
☆ ほんとは
原発で時間を稼いでいる間に、なるべく電気代への影響を抑えながら、自然エネルギーを育てようと考えてたんですよね。たぶん世の中のたくさんの国がそう考えてた。
ところがその原発がいっぺんに何基も失われたので、どのみち電気代が上がるのは避けられなくなってしまった、というのが現状。 ドイツ みたいに、20年前からコツコツ準備してればまだマシだったのだけど…あと10年持ってくれてればなぁ(><)
☆ クギ
「利権」とか「金儲け」とかいう言葉を使って、特定の技術を蔑む方へ。
・お金自体に罪はありません。
・「ボランティア」では、話は進みません。何兆円ものお金がかかるのに、そんな金額を募金箱に入れる人は居ませんから。
・ある程度の「儲け」を出すことにも、罪はありません。たとえば発電所の設備を作ったり、メンテナンスをしたり、場所を提供したりする人達が食べて行くには、「儲け」も必要です。
・「儲けすぎてないかどうか」を、チェックして下さい。活かさず殺さず、なさじ加減が理想的です。
Written by "バカ殿"さくらぃ
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