2011-07-05 (Tue)
☆ アドバイス
今回の全量買い取りが仮に無事に導入された場合について、気づいた範囲で何点か。ツイートはしてたけど、ここでも予め…。適宜更新。
(制度細部の話です。制度の全体的な話や、風力・太陽光の出力変動等については、1つ前の日記をご参照下さい。)
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・メガソーラーの全量買取の水準について:
たしか「最大40円」という水準が検討されてましたけど、この値、一年前の目安なんですよね。
んでその一年の間にも、太陽電池の値段は1~2割下がってます。
もちろん太陽電池以外の設備費とか工事費とかかかるのでそのまま1~2割下げろとまでは言いませんが、パネルの値下がり分は下げるのが妥当と思われます。
他のエネルギーについてはまだ市場すらろくに存在していないものもあります(^^; が、今後上記のような調整が必要になりますので、価格等の調査を怠りなく。
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・助成水準が高すぎると(太陽光を例にとってますが、どのエネルギーでも共通):
-導入ペースが上がりすぎて、現場が追いつかない。全量買取対象となる市場はどのエネルギーも(先行各国に比べれば)極めて未熟なので、あまりにも急激に増やすと、粗悪工事や事故増加のリスクがあります。
-導入ペースが上がりすぎた場合、輸入品が大量流入するリスクもあります。特に太陽電池はここ数年は供給過剰状態が続く見込みですので、注意が必要です。
-助成が多すぎると最悪、2008年のスペインの太陽光発電みたく、暴走する危険もあります(P.37)。
暴走対策としては、買い取り額を低めに設定するのが一番ですが、導入量を予め相談して制限しておくのも有効です。
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・地元への利益還元:
受け入れ側の自治体等に注意喚起。
産業育成なり雇用なり土地代なり税金なりで、何かしら利益を得て行くようにして下さい。これは多かれ少なかれ、各自治体レベルで工夫して頂く必要があります。
ただ、本当はデンマークみたく地元資本に限るとか、そういうこともしたいぐらいなんですよね。日本ではまだそこまで手が回ってませんが(こんなに急ぐ事態になることは想定されてなかった)…。
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・他の施策を併用される際の工夫:
企業が増えることを期待して補助金等を上乗せされる場合、下記のような工夫が考えられます。
-地元資本優遇(当然)
-年度初めに一度募集して終わり、ではなく、たとえば2ヶ月毎に募集
-2~3年次の計画にする
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・太陽光への農地転用について:
耕作地として有望なところは、なるべく残しておいて頂いたほうが…多くなりすぎると、世間様からも批判が出そうですし。(^^;
耕作地として使われる見込みが無さそうな所から、少しずつ始められた方がよいのではないかと。
あと雑草生やしたままにすると周囲に迷惑かかる場合もあると聞いてます。影防止の観点からも、迷惑かかりそうな所では砂利敷き等を義務づけた方がいいかも?
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・風力への農地転用について(念のため):
風力発電機は大して土地食わないので、じゃんじゃんやって下さい。
ただし、騒音被害にはご注意を。
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・競争の促進:
-国内品と競争させて価格を下げるため、ある程度までは海外企業も進出させて下さい。でも輸入が多すぎると今度は国内経済によろしくない。その場合はFIT単独では調整が難しいので、他の助成策や制度で、適宜、その。(^^; たとえば、海外企業が3~5割ぐらいを目安に?
-問題を起こす業者をすぐ見つけ出せるように、トラブル情報にも目を光らせる(公的な情報収集のしくみが欲しいかも…)。悪質な業者は実名公表等や関連許免取り消し等、厳しく臨む。
-もう少し先の話かも知れませんが、適宜、海外企業の工場も国内誘致。国内企業も、必要に応じて再編、とか。飴と鞭を上手に。
☆ 余談
固定価格買取制(フィードインタリフ、FIT)は、現在既に太陽光で導入されています。現在の太陽光発電の余剰電力買取制度も、実はFITの一種です。2年前(政権党が替わる直前)に決まったものですね。全量買い取り制度も、このFITの1種です。(解説:P.31)
「余剰」は節電すると売電量が増えるので、節電意識が高まる特徴があります。また将来電気代が上がった時の備えにもなります。
一方、「全量」は発電した電力は一度すべて電力会社に買い取られますので、「出資してメンテして場所を貸すだけ」という形に近くなります。ドイツなどで普及してるのは、こちらの方式です。
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んで両者の違いからわかる通り、「余剰」は直接の売電収入以外にも「将来のリスクへの備え」という付加価値が生じます。その分、買取価格への反応は緩やかになります。
しかし「全量」はもっとビジネスライクで、投資に対するリターンが求められるようになります。その分、助成水準に対する反応もシャープになるはずです。
対象となる全ての再生可能エネルギーについて言えることですが、今までの家庭用よりも、助成水準の調整に細心の注意が求められるはずです。
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予め、導入量の目安を相談しておく。
市場が暴走しそうなら、すぐに助成水準を下げるか、量を制限する。
市場が縮小しそうなら、助成水準を上げる。
ひょっとしたら年度途中でそういう調整が必要になることも、あるかも知れません。そういう覚悟で臨んで頂くことを、おすすめします。
その方が結局は、国の取り組みとしても、個々の商売としても、長続きで、より効率の良い投資になるはずです。
☆ つか、ほんと
みなさん、焦りすぎないでください。(>_<)
これは私たちが日常的に使う、国全体のインフラ整備の一環です。これから10年も20年もかけて取り組む、息の長~い話ですから。
そりゃ、俺も急ぎたい気持ちは同じやけど。震災前とは全く逆の心配や…。
☆ 参考データ
・ドイツにおける太陽光の買い取り価格:
ここ数年で急速に下がっていて、2011年現在では21~29ユーロセント/kWhぐらいです。ほんの2,3年で半分ぐらいに下がってます。
これは上記のような設備価格の低下によるものと、あとおそらくはスケールメリットで流通・施工コストも下がっているはずです。
・ドイツEEG法の大元(もちろん独語)はこれ。
google翻訳はこちら。大口需要家への補償とかも細かく書かれてるので、興味ある方はどうぞ。
・日本とドイツの条件の違い:
-ドイツは日本よりも日照量が2割前後少ない→同じ設備コストなら、日本の条件に直すとさらに2割ぐらい発電コスト安くなる
-ドイツはメガソーラーなど大規模設備市場が大きく、価格がこなれてる、一方の日本は、メガソーラー市場はこれから立ち上げるところ(価格については、まともな統計すら存在しない状態…資源総合システムさんなら、幾らかデータ持ってるかも?)。
-日本は地上に置くと土地代高い、地震・台風にも耐える必要がある、系統連系機器や各種規制のコストも高そう。
…にしても、40円は高いと思いまする。
Written by "バカ殿"さくらぃ
[利用上の注意]
固定買取対象施設について、建設費や運転費の報告を義務づけ(もちろん秘匿)、買取水準決定の資料にするのがいいと考えています。
同意です。今のところは任意で情報集めてると思いますけど、今後きっちり制度に入れて行きたい所ですねぇ。<br>あと問題業者をすぐ見つけ出せるように、トラブル情報の収集も必要になるでしょうね。