壊れたら直そう日記


さくらぃ(櫻井啓一郎)の私的な日記です。なお、最近はもっぱら[ついったー] を使っています。一覧はこちら(twilog)
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2011-09-17 (Sat)

コスト資料

参考資料、少々。適宜追記。

GTM-forecast…カリフォルニア州における集光型太陽熱発電(CSP)と集光型太陽光発電(CPV)、非集光の太陽光発電(PV)のコスト見通し。出典

このように条件が良い国や地域では、数年で発電端でのパリティ達成が見込まれてます。日本や欧州中部・北部も、安くなるにつれて徐々に達成見込み(下記のEPIA等の資料参照)。

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最新のコスト動向情報は、下記のようなサイトや調査会社の資料がご参考になるかと思います。

最新データ公開サイト:

PV Insights

Solarbuzz

最近のモジュール価格動向の例

その他調査会社等:

Greentech media…老舗専門誌PV NEWSを発行しています。

Photon…同じく代表的な専門誌Photonを発行している調査会社。

資源総合システム…昔から太陽光分野に特化している調査会社。おそらく、日本で一番関連市場データを持っている。

IEA PVPS…IEAの下部組織。データが遅いが、公的な統計。

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先に普及が進んでいるドイツではモジュール(パネル)価格だけでなく、システム全体の導入コストも順調に低減し、過去5年で半額以下になっています。

ドイツにおける価格低減ペース (BSW-Solarに統計データがあります) 紹介記事

2010年の日本の平均価格に比べても、半額以下です。現行技術のままでも、そこまでシステム全体の価格を下げられることが実証されています。

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業界側からのコミットメントとしては、例えば下記のようなものがあります。

・欧州の(&世界最大の)業界団体のEPIAは、現状や将来予測に関する資料を定期的に発行しています

これまでのモジュール価格動向欧州での発電コスト見通し (出典:Solar Photovoltaics: Competing in the Energy Sector, EPIA

日照が日本より良い地域から悪いドイツまで含めた5カ国で、2020年までにはコストが8~18ユーロセント/kWh程度になり、発電単価で天然ガス火力等と並ぶようになると見込まれます。

またEPIAは業界団体ではありますが、これまでの実績で見る限り、予測はむしろ控えめだったと言えます。

・米国ではSEIAが、経済への貢献等をアピールしています。

・日本では、JPEAが普及が進んだ場合のコスト見通しをコミットしています

・IEAが行う予測はこれまでの実績では(控えめすぎて)外れてばかりだと指摘されています(C. Breyer, Reiner Lemoine Institut, 26th EU-PVSEC, 6EP.1.2)。お勧めできません。

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なお、昔の「全額を利率4%で20年間ローンで」というコスト計算方式ですと”46円/kWh”等になりますが、これは実態に合っていません。実際、20年平均で見ますと、25~30円/kWh程度の買取額で済んでいます。これには様々な要因が挙げられますが、ローン期間が実際には想定より短かかったり、節電促進や将来の電気代値上がり対策、非常時対策等の付加価値が生じる分、助成額が低く済んでいるものと思われます。

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また半世紀も一つの経験曲線に乗ってるものに対して、特定国の、特定の数年だけを強調するのは非合理的です。特に日本の2005年からの助成中断と、2008年に再開したばかりの時期は、投資に無駄が生じているため、コスト低減ペースが鈍ります(モジュールだけでなく、周辺機器・流通・施工等も)。そのような特定の一時期だけを根拠に長期的トレンドを論じようとする主張は、詭弁だと言えます。

2009年以降は再び価格低減が再開していることからも、そのような主張は極めて不適切と言えます。

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日本における設備導入費用も、昔はkWあたり60万円以上していたのが、最近は日本製のパネルを用いた製品でもkWあたり40万円程度(標準工事費込み)でテレビ通販され、大手住宅メーカーの標準品では30万円台前半の例も出てくるなど、(全体ではまだゆっくりながらも)価格低減は着実に進んでいます。また輸入品を用いたシステムでは、30万円/kWを切る例も出現しています。少なくとも、"60万円以下に下がらない"などという意見は、事実に反しています。

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現状での太陽光発電の設備価格の内訳は、たとえば下記のようになっています。米国での解析例ですが、日本と市場規模が似ているので参考になるはずです。

太陽光発電設備価格の内訳のモデル例(NREL) (出典:NREL, An Economic Analysis of Photovoltaics versus Traditional Energy Sources: Where are We Now and Where Might Be in the near future?)

導入コスト全体に占める太陽電池モジュール(パネル)製造コストの割合はどんどん低下していて、現在では2割前後です。また総コストに占めるモジュールコストの割合は、2012年にはパネル以外の設備(BOS)の方が割合として多くなると見られてます。

つまり太陽電池はもう「部品の1つ」になってきていて、それを利用したシステム全体でビジネスを考えないといけない時代になってます。またコスト低減の面でも、流通コストやBOSコストの低減が重要になっています。これは上図のように変換効率が向上したりすることでも低減しますが、現時点では普及量を増やすことが最も効果的です。

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太陽光発電は確かに現時点では化石燃料よりも高コストですが、化石燃料が日本では殆ど輸入なのに対し、太陽光発電は少なくともそのコストの半分以上は国内での付加価値と見られます(たとえパネルを全て輸入したとしても)。その分は、化石燃料よりも国内経済に貢献します。

さらに、上で紹介しているように、10年以内に発電単価でも競い始める見込みです。こうなってきますと、温暖化ガスの削減コストも無視できるようになります。むしろ国内での付加価値が大きい分、国内経済にとってプラスになると期待されます。(そこに至るまでは、負担と経済効果のバランスに配慮する必要がありますが。)

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昨今は中国・台湾・マレーシア等の新興国が台頭しています。

しかし比較的出遅れた米国でも、関連産業まで含めると貿易収支はプラスと見られています

米国の太陽エネルギー関連産業全体の輸出入状況大元のスライドGTMの記事

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太陽光のコスト低減は、量産規模の拡大、新技術の投入、流通コストの低減、長寿命化等の複数の要因で進んでいます。(変換効率は、影響要因のひとつに過ぎません。)

このうち新技術の投入については、研究レベルで「もうあとは量産してみるだけだ」という段階まで開発が進んだ技術が実際に量産に応用されるまで、3~7年程度かかると言われています。このため開発状況を調べておきますと、数年先の技術動向がある程度予測できます。

組み合わせ方

Peak-Base…発電所の組み合わせも、需要の変動パターンになるべく合わせるのが重要。いくら安くても、特定の発電方式に偏りすぎると、却ってコストやリスクが増大します。

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再生可能エネルギーの普及に当たって、経済効果や雇用創出に焦点をおく場合、実際に普及を進めている ドイツのデータ が参考になります。P.10にエネルギー供給量、P.14に発電量、P.44-46に経済効果、P.47に雇用。

例えば地域の雇用重視なら、バイオマスの普及促進を検討されると良いかもしれません。


Written by "バカ殿"さくらぃ
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